備業は警備業法によって規制されています。
この法律では「警備業のできない人・警備員になれない人」が定められています。
ここでは警備業者と警備員の欠格事由(警備業法3条・14条1項)を説明します。
「3歳の幼児は警備業者になれる?なれない?」。検定試験に出そうですね。
でも、安心してください「普通の人ならすべてクリアーできます」。
「普通じゃない人」はよく読んでください。
なお、「警備員募集」で面接にいくと、
まず「今までに刑務所に入ったことがありますか?」とか「警察のやっかいになったことがありますか?」と質問されます。
これは「採用する警備員が警備員になれない人でないか」確認しているだけです。
そして、「そう質問するように」公安委員会から指示されているからです。
気分を害しないでください。
- 1.警備業のできない人(警備業者の欠格事由)
- ① 破産者で復権をえない者
- ②禁固以上の刑に処せられた者・警備業法に違反して罰金の刑に処せられた者で、その執行を終わり・執行を受けることがなくなった日から5年以内の者
- ③最近5年間に、警備業法の重大な違反をした者・警備業務に関して他の法律の重大な違反をした者
- ④暴力団の構成員
- ⑤暴力団と関係して、お上から叱られて3年経たない者
- ⑥アルコール・麻薬・大麻・あへん・覚醒剤の中毒者
- ⑦国家公安委員会が「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない」と定めた者
- ⑧未成年者で「営業に関し成年者と同一の行為能力を持っていない」者
- ⑨指導教育責任者を置けそうにない者
- ⑩警備会社の役員に上の①~⑦に当たる者がいないこと
- ⑪陰に暴力団がいないこと
- 2.警備員になれない人(警備員の欠格事由)
1.警備業のできない人(警備業者の欠格事由)
「警備業者の欠格事由」は警備業法3条で11項目が規定されています。
次のどれかに該る人は警備業者になれません。 ( 警備業法3条 )
① 破産者で復権をえない者
破産した者は「裁判所が債権者にその財産を分けるまで」自由にその財産を処分することができません。
当然、これに関係する法律行為もできなくなります。
破産者は「法律行為の自由が制限されている人」なので「警備業ができない」としたのです。
破産手続が終わり、破産者が復権した場合は法律行為の自由が元通りになりますので、警備業をすることができます。
「破産しているかどうか」は身分証明書に書かれています。
( 成年被後見人、被補佐人はOK )
従来「成年被後見人、被補佐人」を欠格事由としていましたが、
「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号・令和元年6月14日公布」により、警備業法3条1号から削除されました。
「成年被後見人」とは「精神上の障害により、“常に物事を理解することができない者”で、裁判所から後見開始の審判を受けている者」
「被補佐人」とは「精神上の障害により、“物事を理解する能力がとても不十分な者”で、裁判所から補佐開始の審判を受けている者」です。
以前の禁治産者・準禁治産者のことです。民法7・11・15条に規定されています。
以下では成年被後見人等と表記します。
(成年後見人制度の趣旨)
この制度は「生き馬の目を抜く」自由経済社会から弱者を守るためのものです。
この人たちに後見役を付けて、この人たちの法律行為に制限を加えその利益を守ります。
たとえば、認知症で物事をまったく理解できない老人が家を買いました。
しかし、その後見役(成年後見人)はそれを取り消すことができます。
「物事をまったく理解できない」程度ではないが「理解することが非常に困難な人」が家を買おうとするときは、その後見役(補佐人)の同意を得なければなりません。
同意を得ないで家を買ったときはその後見役がそれを取り消すことができます。
この制度は、個人に与えられた自由を制限するものであり、またこの制度が悪用されないように、
公正な第三者(裁判所)が「その人の法律行為を制限してよいかどうか」を決めます。(成年後見の開始・補佐の開始の審判)
また、この人たちと取引しようとしている者に
「この人は法律行為が制限されている」ことが分かるように、成年被後見人・被補佐人は法務局に登録されます。※法務省の「成年後見人、補佐人」の説明
(成年被後見人・被補佐人を欠格事由とすることへの批判)
しかし、法律により成年被後見人等を資格・職種・業務等から一律に排除すること(欠格事由とすること)が成年被後見人等であることを理由に不当に差別することであり、成年被後見人等の人権を害することになるとの批判から
「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」によって「成年後見人等が欠格事由から外されました」
一律に排除するのではなく個別的、実質的に審査して対応していくべきということです。
②禁固以上の刑に処せられた者・警備業法に違反して罰金の刑に処せられた者で、その執行を終わり・執行を受けることがなくなった日から5年以内の者
簡単に言えば、刑務所を出てから5年経たないと警備業をすることができません。
・仮釈放の場合は「仮釈放期間が終われば刑務所を出た」ことになりますから、仮釈放期間が終わってから5年です。
・時効が完成した者もその日から5年です。
・執行猶予中の者は「執行猶予期間が終われば刑罰が与えられなかったこと」になりますから、執行猶予期間が終わればその日からOKです。
・以上は、警備業法に違反して罰金刑を受けた者も同様です。
③最近5年間に、警備業法の重大な違反をした者・警備業務に関して他の法律の重大な違反をした者
刑が課せられたかどうかは関係ありません。
違反しただけでダメです。
「何が重大な違反であるか」は国家公安委員会規則で定められています。
④暴力団の構成員
「集団的に、または常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを、行うおそれがあると認めるにたりる相当な理由がある者」と規定されています。
実際に行わなくても「行うおそれがある」だけでダメです。
⑤暴力団と関係して、お上から叱られて3年経たない者
「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」がらみです。
詳しくは条文(警備業法3条5号)参照。
⑥アルコール・麻薬・大麻・あへん・覚醒剤の中毒者
中毒であれば、その軽重は関係ありません。
⑦国家公安委員会が「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない」と定めた者
軽い鬱病などの「軽い精神障害者」は医師の「警備業務を適正に行える」という診断書があればOKです。
平成14年の改正で「軽い心身障害者」に仕事の幅を拡げました。
⑧未成年者で「営業に関し成年者と同一の行為能力を持っていない」者
未成年者(18歳未満の者)が法律行為をするためには法定代理人(一般には親)の同意が必要です。
その同意を得ないでした法律行為は法定代理人が取り消すことができます。(民法5条1項)
法律行為を自由にやれることができないので警備業をやることができないのです。
但し、未成年者の法定代理人は「その未成年者が営業をすることを許可する」ことができます。
この場合、その未成年者は許可された営業に関して成年者と同じように扱われます。(民法6条1項)
そのため、法定代理人の許可があれば未成年者でも警備業をやれます。
しかし、未成年者が法定代理人の操り人形にならないように警備業法で制限が付けられています。
「その未成年者が警備業者の相続人であること」+「その法定代理人が上の①~⑦の条件をクリアーすること」(警備業法3条8項但書)
なんと「3歳の幼児でも警備業をやれる」ことになりますネ。
⑨指導教育責任者を置けそうにない者
警備業をやるためには、営業所ごとに「その業務についての指導教育責任者」を置くこと(選任すること)が必要です。
「名前だけ借りてきて実際には置いていない」ことを防ぐために、
「指導教育責任者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者は警備業ができない」と定めました。
たとえば、
「まだ指導教育責任者が決まっていない」、「その営業所に勤務することが不可能な者を指導教育責任者にしている」場合です。
もちろん、指導教育責任者の仕事は毎日出勤しなくてもできます。
一カ月に何日か出張して来ればよいでしょう。
「通勤1時間程度」などと言われていますが、通勤時間や通勤距離で一概に決まるものではないでしょう。
「置けそうにないかどうか」は公安委員会が決めることになります。
⑩警備会社の役員に上の①~⑦に当たる者がいないこと
その役職名は関係ありません。
その会社に対し、重役と同じくらいの支配力を持っている者です。
⑪陰に暴力団がいないこと
上で説明した「④に当たる者が出資・融資・取引関係を通じて、警備業務活動に支配的な影響力を持つ場合」と規定されています。
以上の ① ~ ⑪ に当たらなければ警備業をやることができます。
もちろん、「 ① ~ ⑪ に当たらない」という公安委員会の認定を受けなければなりません。
「認定」とは「必要とされる要件を満たしているかどうかをチェックすること」ですから、その要件を満たしている場合は認定をしなければなりません。
しかし、暴力団排除のための ④・⑩・⑪ は「あいまいな基準」ですから「暴力団と関係があればまず認定されない」ことになるでしょう。
普通の人の場合、刑務所に入ったことはないだろうし、麻薬・覚醒剤など見たこともないでしょう。
精神異状もなく、暴力団との付き合いはないでしょう。
だから、「普通の人」なら警備業の認定はおりることになりますので安心してください。
2.警備員になれない人(警備員の欠格事由)
警備員になれない人は、
「18歳未満の者」と「上の ① ~ ⑦ に該る人」です。(警備業法14条1項)
親の警備業の相続人で法定代理人が「警備員になること」を許可してもだめです。
18歳の制限を置いたのは、警備業務を適正に行うためには、「判断能力・自制力・責任感・社会常識」が必要だからです。
これらの能力がない者が警備業務を行うと一般人の権利を不当に侵害することになるからです。
また、警備業務は過酷であるので「児童酷使の禁止(憲法27条3項)」から警備業務につかせないようにしたのです。
三歳の幼児が交通誘導をしていては困りますからね。
警備業者は警備員になれない者を警備業務を行わせてはいけません。(警備業法14条2項)
『警備員? 国道で真っ黒な顔をして、ボ~ッと立っているヤツかい!』などと、見下してはいけません。
警備員は「公的に普通の人であることを認められている人」なのです。