呆れる「津市の印鑑行政」

「今まで通りなら失敗はない。定年までじっとしているのが一番…。」



2020年12月に内閣府から「地方公共団体における押印見直しマニュアル」が出た。
津市はこのマニュアルに基づき何らかの見直しを行ったのだろうか?

そうとは思えない。
ことあるごとに津市の各部門で押印が求められる。
そして、その根拠として持ち出してくるのが「2006年の津市会計規則42号」。
彼らは「14年前の会計規則に縛られて」押印を求めてくるのだ。
もちろん会計規則を厳守する彼らに責任はない。
14年前の古びた会計規則を修正しない者に責任がある。

今回は「津市の大江戸印鑑行政」について考察してみよう。

※押印見直しマニュアル35頁「第4章おわりに」
「絶えず変化を求める気持ちと不満こそが、

進歩するために最初に必要となるものである」 ( エジソン )
長年守られてきたルールを変更するにはリスクを伴いますが、
変化の激しい時代においては、

変化に対応せずに時代に取り残されるリスクにも目を向ける必要があります。」

※地方公共団体における押印見直しマニュアル → こちら
・内閣府
・令和2年12月18日・初版
・本稿では「押印見直しマニュアル」と記述する。

●津市会計規則27条の検討
事例①なんでもかんでも「契約印!」
事例②還付請求で「署名ではダメ、記名+認印が必要」

津市会計管理室の「還付請求書は署名ではだめ、記名+認印が必要」の理由

1.津市会計規則42号・27条の検討

a.津市会計規則27条

27条
収支命令者は、支出負担行為に基づき支出しようとするときは、支出命令書に次に掲げる書類を添付し、会計管理者に対し当該支出の命令の手続きをするものとする
(1)-略-
(2)-略-
(3)債権者の請求書-後略
(4)-略-

2項-略-

3項-略-

4項
1項3号に規定する請求書は、次の要件を備えていなければならない。
(1)請求金額並びにその内容及び算出の基礎
(2)債権者の住所、氏名、及び押印
(3)請求年月日
(4)2枚以上にわたるものは、債権者の割り印

5項
前項2号及び4号の規定にかかわらず
正当な債権者から提出された請求書であると収支命令者が特に認める場合は
当該請求書への債権者の押印等を省略することができる
但し、29条1項の規定による代理人による支払いの請求については、この限りでない。

※津市会計規則は四日市市とは異なり公開されていない。
※上記条文は後述の問題のあった部署から提示されたものである。

要するに
・津市に出す請求書には「請求者の住所,氏名,押印」が必要。
・「正当な請求者からの請求書と特に認められる場合」は「押印等」を省略できる。
※ここで「押印等とは何か」の疑問が残るが
規定の文言から考えて「住所,氏名,押印」のことだろう。

b.文書の真正さを推定する署名と押印

署名や押印は「その書類が作成者の意思により作成されたものであることを証する行為」。

民事訴訟法228条(文書の成立)
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2-略-
3-略-
私文書は本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する
5-略-

民事訴訟法では「文書の真正さを示す行為」として署名と押印を同列に挙げているが、
その推定力は署名の方が押印より強くなる。

それは署名があれば本人が書いたと分かるが、
押印の場合は「本人がその印章を持っていても、本人が押したかどうか分からない」からである。
そのため、押印については次のような二段の推定をしている。
①本人が持っている印章なら本人が押したと推定。 ( 押印したことの推定 )
②本人の押した印影があれば本人が作成したものと推定。 ( 本人が作成したことの推定 )
※最高裁昭和39.5.12・民集18巻4号597頁

このように「二段の推定」をしなければ「本人が作成したこと」にならない押印は
「一段の推定」で足る署名より推定力が弱く、署名に劣ることになる。

c.津市会計規則27条での署名の扱い

●「署名を認めていない」のは民事訴訟法と矛盾する。

このように文書の真正さの推定力において署名の方が押印より強いのに
津市会計規則では「請求書の要件」として「住所,氏名,押印」として「署名を含めていない」。
( 27条4項2号 )

津市会計規則においては「押印が王様」なのだろう。
しかし、「署名を認めない」のは規則の上位にある民事訴訟法と矛盾している。
早急に「署名を含める」べきである。

・津市◯◯町◯◯番地,△△△△,印。
・津市◯◯町◯◯番地,署名
民事訴訟法では二つとも同じ効力が認められる。
しかし、津市会計規則では「上だけが認められて下は認められない」。

津市は『朱肉の印影!黄門様のモンドコロ!』。
まさに大江戸行政のままなのである。

「正当な債権者の請求書であると認められる場合」の取り扱い

会計規則27条4項2号が「署名を含めていない」不備は
27条5項の「正当な債権者の請求書であると認められる場合」に「署名あるとき」を含めれば補うことができる。

条文の不備を他の条文の解釈で補うことはよくある。
津市会計規則27条4項2号の不備は27条5項の解釈で補えば「規則改正」をする必要はなくなる。

署名だけでなく諸般の状況から「正当な債権者からの請求書であると判る場合」はなおさらだろう。

なお、手形署名に関してだが、
「記名・押印が有効であるためには、
記名と印影が形式的に一致ないし関連していることを要しない」 ( 判例・通説 )

「本人がその印章を押したと推定されるのは本人がその印章を持っているから」であり、
「その印章が本人の氏名と何ら関係ないものでも構わない」からである。

津市への請求書に
「津市◯◯町◯◯番地,山本太郎」のあとに「川上の印章」を押したらどうなるのだろう?,
そもそも、「印章や印影の法律的定義」はない。
それなら竹を切って「◯」でもよいことになる。
「朱肉の印影は王様」と崇める大江戸津市に「竹の◯印」。
これはおもしろい。
一度やってみたいものだ。

次にこの会計規則により「押印を求められた」事例を紹介する。
一つは「署名だけでOK」となって解決済み。
もう一つは未解決である。

「そのうちに諦めるだろう。何も聞こえません…。」



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