●警備業界に基準法は存在しない ⑤



「社会保険に加入してくれない…。」
「有休休暇を取らせてもらえない…。」

ハ、ハ、ハ、
残業分は支払ってくれるのでしょう?
最低賃金以上の額なのでしょう?
それなら「上等、上等」。

この業界では「基準法違反」が当たり前。

基準法違反は「やった者勝ち」。
監督署に指摘されたら「その時から」守ればよい。
過去の違反は追及されない。

監督署は「そこで働いている者,働いていた者」の違反申告がなければ動かない。
それ以外の者が違反情報を知らせても動かない。

この業界で「基準法を持ち出したら」干されてしまう。
「きつい現場に回される」、「仕事を与えてもらえない」。
結局は「辞めなければならない」。
監督署に違法申告をする者なんているはずがない。

この業界に労働基準法は存在しないのです。

えっ?
「業務の発注者が基準法違反に文句を言ってくる」ですって?

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」のことですね。
国の「ビジネスと人権に関する行動計画」のことですね。

「企業はその製品が作られる過程で人権侵害がないように配慮しなければならない」という「社会的責任」ですね。
どこかの芸能事務所の人権侵害で注目されているアレですね。

そんな「社会的責任」にビクビクするのは「世間体を気にする」大企業だけ。
自ら率先してやらなければならない地方公共団体すら全く気にしていませんから。
落札価格が高くなるので、発注した業務の違法労働は見て見ぬふり。

今回は「この状況を変えるたった一つの方法」を説明します。

5.「警備業界の違法労働」を変える方法

・零細警備業者が仕事に群がり「安値競争」。
・安値受注で利益を上げるために違法労働。
・労働者の申告で監督署が動いても是正勧告だけで無罪放免。
・申告した労働者は「干されて」生きていけない。
・発注者はできるだけ安くしたい。
   「発注者は受注者の法令違反をチェックしなければならない」という国連の指導原則は守らない。
・「指導原則を率先して守るべき」官公庁や地方公共団体も「安値で受注させるために知らんぷり」。

警備業界の違法労働をストップさせる者は誰もいない。
「基準法違反,違法労働はやった者勝ち」。
どんどんエスカレート。
警備員は「生きていくために」耐えるしかない。

あなたが「普通の警備員」であればこの状況を打開する方法はありません。

a.普通の警備員には変えられない

その警備会社や警備業界に残るつもりなら、
管理職に直談判したり監督署に違反申告をしてはいけません。
あとで「干されて」辞めざるをえなくなります。

零細警備会社は横のつながりがあります。
「干されたあなた」を雇ってくれる警備会社はありません。

あなたがその警備会社に残る限り、警備業界にとどまるかぎり
警備業界の違法労働に文句は言えず、それを変えることはできません。

では、その警備会社を辞める場合や警備業界から去る場合はどうでしょう

『こんな会社なんか潰してやる!警備業界を掃除してやる!』
あなたは監督署に警備業界の違法労働を申告します。

しかし、監督署が取り上げるのは「あなたが働いていた警備会社」だけ。
どれだけ証拠がそろっていても他の警備会社の違法労働は取り上げません。
他のたくさんの警備会社の違法労働はそのままです。

それでは「あなたが働いていた警備会社」はどうなるでしょう。
監督署は調査をして違法労働に対して是正勧告をします。
会社はその勧告に従って違法労働を止めれば無罪放免です。
今までの違法労働の責任は問われません。

あなたへの未払い賃金について監督署は関知しません。
会社が「支払わない」と言えば裁判を起こすしかありません。
未払い賃金が何百万なら裁判もありえますが、通常の警備員なら未払い賃金はそれほど多くないので話し合いになります。
まあ、有休残りを含めて「給料一か月分」程度でしょう。

会社はこの程度の損害ではビクともしません。
かえって「うっとうしい警備員がいなくなった」と「安値受注 → 違法労働」をエスカレートさせていきます。

結局、あなたは「警備業界の違法労働を変える」どころか「その警備会社を揺らす」こともできないのです。

b.宿日直警備員なら変えられる

「警備業界の違法労働を変える」ためには、
会社に「違法労働で得られるものより大きな損害」を与えなければなりません。
「こんなことなら違法労働をやらない方が儲かる」と思わせなければなりません。

それができるのは「1ポストの宿直業務を行っている施設警備員」だけです。

『えっ?守衛のオッちゃんにそんな力があるの?』
そう思うでしょう?
彼らには「そんな力」があるのです。

これは「宿直警備員の適正賃金差額請求」で詳しく説明しますので「さわり」だけ。


宿直業務は勤務時間が8時間を超えるので、
業務を行わせるために断続的労働の適用除外許可と最低賃金の減額許可が必要です。
この許可を得ていないと基準法違反,最低賃金法違反になります。

しかし、「違法労働が当たり前の警備業界」では零細警備会社のほとんどがこの許可を得ていません。

会社が断続的労働の適用除外許可を得ていなくても警備員には関係ありません。
警備会社が基準法違反の責任を問われるだけです。

しかし、最低賃金の減額許可を得ていないと警備会社は警備員に「通常賃金」を支払わなければなりません。
通常賃金は
・16時間勤務の日当:最低賃金×20時間分
・24時間勤務の日当:最低賃金×30.1875時間分
※1ポストの場合休憩時間や仮眠時間はすべて労働時間となります。

警備員は「この通常賃金と実際の賃金との差額」を請求できることになります。
請求できるのは「遡って3年分」。
その差額を概算すると最大で
・隔日の16時間勤務:500万円
・隔日の24時間勤務:800万円

宿日直警備員は「会社が最低賃金の減額許可を得ていない場合に」これだけの額を請求できるのです。

もちろん、監督署はタッチしません。
会社は20万円程度の一時金で話をつけようとしますが断りましょう。
裁判にすれば100%勝てます。裁判費用は負けた会社負担です。
弁護士費用はかかりますが「しっかりと残ります」。
その会社と警備業界には残れませんが「500万円~800万円」あれば「次を」考えられます。

一人がこれを成功させたら「我も我も」。
「宿直警備員適正賃金の差額請求」は全国に広がっていきます。

これで潰れる警備会社も出てきます。
興味本位のマスコミが取り上げます。
「キャッシュカード過払い請求」が行き詰まっている法律事務所がTVコマーシャルを入れます。
さらに「我も我も」。

「受注者の法律違反は関係ありません」と逃げていた発注者も
世間の批判を避けるために「法律違反をしていた受注者との契約を解除」。

零細警備会社は「これは一大事」と断続的労働の適用除外許可や最低賃金の減額許可を申請。
「基準法違反の怖さ」を 実感し、基準法を守るようになります。

「一人500万円~800万円の嵐」が過ぎた後には、
警備業界の違法労働はなくなっています。
監督署は「漁夫の利」で「めでたし・メデタシ」。

まずは「最初の一人」です。

次回より詳しく説明していきます。
お急ぎの方は → 「宿直警備員適正賃金差額請求



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