気付いているはずの手続の欠陥!基準監督署長が基準法違反の間接正犯?
「断続的労働に従事する者に対する適用除外許可」や「最低賃金の減額の特例許可」を申請すると、
「その労働者をその業務に、実際に従事させてから」実地調査があります。
そして、実地調査のあとに審査をしてOKなら適用除外許可書と減額の特例許可書が交付されます。
では、その許可書の効力はいつから発生するのでしょうか?
つまり、「労基法の適用が除外される・最低賃金の減額をしてもよい」のはいつからでしょう?
厚生労働省の「適用除外許可,最低賃金の減額許可を説明する頁」では、このことに一切触れていません。
労働基準監督署への許可申請のときも、許可書が交付されるときも、担当から何の説明もありません。
実地調査のためとはいえ
「まだ適用除外許可や減額許可の下りていない業務に、その労働者を従事させなければならない」のです。
当然「申請日か実地調査の日に遡って許可される」と思いますよねぇ。
そして、許可書には「〇〇年〇月〇日をもって…許可する」という文言。
※〇〇年〇月〇日というのは申請日。
しかし、「許可書の効力が生じるのは許可書の交付のときから」なのです。
許可書が出るまでの間にその断続的労働に労働者を従事させれば労基法違反となり、、
許可書が出るまでの賃金は減額されない通常の賃金を支払わなければならないのです。
理由は簡単。
労働基準法41条3号の「使用者が行政官庁の許可を受けたもの」、
最低賃金法7条の「都道府県労働局長の許可を受けたときは」の
「許可を受けた」とは「許可をしたとき」つまり「許可書の交付日」。
申請時に使用者がこれを知っていれば、
最低賃金の減額許可書や断続的労働の適用除外許可書が出るまで労働者をその業務につかせません。
そうすると、労働者の労働の機会が減ってしまいます。
だから、説明しないのです。
使用者に「申請時 or 実地調査時に遡って許可される」と誤解をさせたままで労働者を働かせておくのです。
もちろん、使用者は誤解しているので
許可書が出るまでの1カ月は「労基法違反や最低賃金法違反の状態が」生じます。
しかし、それが問題になったら、「許可書が出たときから許可の効力が発生する」と説明して、
使用者に責任を押し付ければ済むのです。
ところが、適用除外許可では「使用者に責任を押し付ければ済む」で片づけられない問題が起こります。
それは、その実地調査で「使用者が適用除外許可が下りていない断続的労働に労働者を従事させる」こと。
これは労働基準法違反です。
つまり、断続的労働の適用除外許可を得るために、使用者は必ず労基法違反をしなければならないのです。
もちろん、厚生労働省の定めた手続に従っただけの使用者に労基法違反の犯罪は成立しません。
しかし、その手続を定めた厚生労働省やその手続によって許可をした労働基準監督署長は
労基法違反の間接正犯となります。
ただ、労基法違反を摘発するのが労働基準監督署なので問題にならないだけです。
彼らの間接正犯は別にしても、
「法令を適正に実施するための行政手続が法令違反を前提にしている」のは矛盾しています。
当然、彼らはそのことに気付いています。
だから、説明しないのです。
説明すれば制度の矛盾が露呈するからです。
「使用者と労働者は無知だ」と思っているのです。
「自分たちの作った行政手続が法律だ」と思い上がっているのです。
この点を説明します。
大いに憤りましょう。
なお、この矛盾した行政手続を修正するのはとても簡単です。
「許可の効力を申請時 or 実地調査時に遡る」とすればよいだけです。
「許可を受けた」 → 「許可をしたとき」 → 「許可書の交付日」という自分たちの解釈を変えれば良いだけです。
- 最低賃金の減額の特例許可の効力発生時期とその問題点
- 断続的労働の適用除外許可の効力発生時期とその問題点
1.基礎知識
a. 断続的労働の適用除外許可
常駐警備には宿直・日直業務というものがあります。
夜間や休日に施設に常駐し、施設の施錠・開錠や巡回を行います。
あとの時間は警備室で待機し、電話・郵便物の受領,来訪者対応,火災・事故などの緊急対応をします。
待機時間をどのように過ごすかは自由です。横になる,飲食,テレビ,読書,書き物…。仮眠も可能です。
このように、「巡回などの実労働」と「緊急対応などのための待機」が繰り返される業務を断続的労働といいます。
※「待機時間を警備室内で自由に使える」ことが必要です。
待機時間に座哨や立哨などの業務を行わなければならない場合は断続的労働ではありません。
平日なら17時~翌8時30分の15.5時間勤務、
休日なら8時30分~翌8時30分の24時間勤務。
これは「8時間/日,40時間/週」の労働時間制限(労基法60条)に反します。
また、1ポストの場合は「常に緊急対応・来訪者対応の可能性がある」ので休憩は存在しません。
そのため、「8時間を超える場合は1時間の休憩を与える」(労基法34条)にも反します。
しかし、このような業務は従来から行われてきたものであり、多くの労働者が従事しています。
この業務に基準法をそのまま適用すると多くの労働者の雇用機会を奪うことになります。
そこで、断続的労働の中で「実労働時間より待機時間の方が圧倒的に長いもの」かつ「精神的負担の少ないもの」については「基準法の労働時間の制限や休憩を除外する」ことが認められています。(労基法43条の3号)
これを「断続的労働の適用除外許可」といいます。
この許可は「その業務について」労働基準監督署に申請し、
実地調査と審査の後に「その業務に対して」・「無期限で」与えられます。
b.最低賃金の減額の特例許可
労基法の適用除外となるような断続的労働では、
拘束時間は長いけれど実労働時間が短いので全体としての労働強度は低くなります。
この賃金を「拘束時間×最低賃金」にすると、経費が高くなり施設側や雇用者がこの業務から手を引いてしまいます。
その結果、この業務に従事する者の雇用機会を奪うことになります。
そこで、この業務に従事する労働者に対しては最低賃金を減額することが認められています。
実際には、実労働時間を100%評価、待機時間を60%評価として計算し、最低賃金を減額します。
賃金は「拘束時間×減額した最低賃金」となります。
※深夜労働分は25%割増。8時間超えの残業割増なし。
この許可は「その労働者について」労働局に申請し(窓口は労働基準監督署)、
実地調査と審査の後に「その労働者に対して」、「期限付き」で与えられます。
※最低賃金の減額の特例許可マニュアルⅣ-5-(1)趣旨/P36
「断続的労働に従事する者」とは、労働基準法第41 条第3号に規定する「断続的労働に従事する者」と同意であり、
常態として作業が間欠的に行われるもので、作業時間が長く継続することなく中断し、しばらくして再び同じような態様の作業が行われ、また中断するというように繰り返されるもののことであり、労働時間中においても手待ち時間が多く実作業時間が少ないものが該当するものである。
このような断続的労働は、実作業時間と手待ち時間とが繰り返されて一体として成り立っている労働形態であり、手待ち時間が多く実作業時間が少ない労働に従事する者について減額特例の許可を認めないこととすると、これらの労働者の雇用の機会が阻害され、かえって労働者に不利な結果を招くおそれがあることから、断続的労働を減額特例の許可の対象としたものである。
2.最低賃金の減額の特例許可の効力発生時期とその問題点
a.最低賃金法7条の減額の特例許可事務マニュアル
(法令の定め)
最低賃金の減額の特例許可についての法令は次の二つ
〇最低賃金法7条
「使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、
次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第四条の規定を適用する。
1.…
2.…
3.…
4.軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者
〇最低賃金法施行規則3条2項
「法7条4号の厚生労働省令で定める者は、軽易な業務に従事する者及び断続的労働に従事する者とする。」
(行政手続-厚生労働省の実務マニュアル)
この許可を出すための事務処理手続は 「最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアル 基賃発1209第1号
(厚生労働省労働基準局賃金課長)」によって行われています。
※最新版は基賃発1224第1号 (令和3年3月15日公表、書式に変更があっただけです)
これは厚生労働省が定めた手順で、一般の国民に対する法的拘束力はありません。
警察庁の「警備業法の解釈運用基準」と同じく「その行政機関内でだけ拘束力を持つ」ものです。
つまり、最低賃金法7条の「許可を受けたとき」や「その他の事情を考慮して」 についての厚生労働省の解釈に過ぎません。
b.事務マニュアルによる手順
事務処理は次のように行われます。
・申請と実地調査
許可申請のあとに実地調査が行われますが、
「その労働者が既にその業務に就労していること」が必要です。
〇法令上の根拠(津労働基準監督署担当者の説明)
・最低賃金法7条4号「 軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者 」
・最低賃金法施行規則3条2項「軽易な業務に従事する者及び断続的労働に従事する者とする。」
・「従事する者」=「従事している者」=「実際に就労している者」
※チョット飛躍があるように思えますが…。
〇事務マニュアル「6.申請及び許可の時期」P11
「減額特例の許可は、特定の減額対象労働者について、最低賃金を減額して適用することを認める許可であることから、申請及び許可は労働契約により、減額対象労働者及び当該労働者の労働条件(従事する業務の内容等)が特定されてから行う必要があること。
なお、労働契約締結後、当該労働契約の内容から、申請に必要な事項が明らかな場合は、減額対象労働者が就労を開始する前に申請を行うことも可能であるが、原則として下記Ⅲ2⑴の実地調査は減額対象労働者の就労開始後に行う必要があることを説明すること。」
要するに
・その労働者について最低賃金を減額する許可 → 労働者と業務の内容が特定されてから申請と許可を行う。
・労働者と業務内容が特定されれば申請はできる。
・しかし許可はその労働者の業務を実地調査をしてから → その労働者が就労していることが必要。
〇つまり
①使用者がその断続的労働に従事する労働者を雇う(業務の内容と労働者が特定される)
②使用者が減額許可を申請
③その労働者がその断続的労働を行う。(その労働者の就労)
④労働局が申請内容が正しいか実地調査をする。
⑤労働局が許可書を出す。
〇ポイント
・許可が出るまでに、その労働者をその断続的労働に従事させなければならない
・申請から許可書交付の期間
(申請から許可までの時間)
・申請~実地調査までの標準期間が15日。
・実地調査後の審査に15日くらい
・結局、申請~許可書交付まで30日くらいかかります。
〇実務マニュアル「5.標準処理期間」P11」
「行政手続法(平成5年法律第88 号)第6条の「標準処理期間」については、
平成6年9月30 日付け基発第612 号・婦発第273 号(改正:平成11 年3月31日付け基発第179 号・女発第109 号)「行政手続法の施行について」により、正当な理由がある場合を除き原則として15 日以内とされていることに留意すること。」
ここで「標準処理期間」とは「申請~実地調査日を設定した日」のことです。(津労働基準監督署担当者の説明)
つまり、申請から15日以内に実地調査の日を設定すればよい。
〇当方の申請した許可では
・雇い入れ : 減額最低賃金で計算した日当を示して募集。令和3年6月1日に2名雇用。
・許可申請 : 令和3年6月4日
・実地調査 : 令和3年6月上旬
・就労開始 : 令和3年7月13日/令和3年7月14日
・労働者への電話での聞き取り : 令和3年7月下旬
・許可書交付 : 令和3年8月12日
※実際の就労から30日以内で許可が出ています。
※断続的労働の適用除外許可と最低賃金の減額許可は別のものです。
前者は「その業務についての適用除外許可」で後者は「その労働者についての減額許可」です。
そのため、実地調査もそれぞれ別に行われます。
適用除外許可の実地調査は「労働者」がその業務に従事してから行われ、
減額許可の実地調査は「減額許可の対象となる労働者」がその業務に従事してから行われます。
ただし、最初は適用除外許可と減額許可が併せて申請されるので、
「減額許可の対象となる労働者」かその業務に従事してから併せて実地調査が行われることになります。
令和3年6月上旬の実地調査時には雇用した労働者は業務に従事していません。
私がすでにその業務に従事していたので「適用除外許可の実地調査」が行われたのでしょう。
最低賃金の減額許可の実地調査は
雇用した労働者の就労後に行われた「令和3年7月上旬の電話での聞き取り」が該るものだと思われます。
・まぎらわしい許可書の記載
〇次のような許可書が出ました。
・三労許可第〇〇〇〇号 令和3年8月12日
・事業場の名称,所在地,使用者職氏名,三重労働局長 (大きな角印)
・「令和3年6月4日付けをもって最低賃金法第7条の規定に基づき申請のあった断続的労働に従事する者に対する
最低賃金の減額の特例については、下記の附款を付し、次のとおり許可する。」
・減額の特例を許可する最低賃金名,許可対象労働者名,従事させようとする業務の種類,労働の態様,
所定時間・実作業時間・手待ち時間,減額後の最低賃金,支払賃金額
・「許可の有効期間は、令和3年8月12日から令和4年4月30日までとする。」
〇この許可書を見て「いつから最低賃金の減額が可能」だと思いますか?
許可申請のときも許可書の交付のときも「いつから効力が発生するか」について担当から説明はありません。
当然「令和3年6月4日付けをもって…許可する」と考えます。
私はそう解釈して、「許可書が出るまでの賃金は、募集のときに提示した減額最低賃金で計算した日当で問題ない」
と思っていました。
c.最低賃金の減額はいつからできるか?
・事の発端
雇用した内の一人が「60歳以上の就職困難者」として助成金の対象になっていました。
助成金申請用紙が送られてきたので令和4年1月初めに提出。
その審査過程で「減額許可が出るまでの間に、減額した最低賃金で計算した日当が支払われていること」が問題となりました。
2月初め、労働局の助成金センター担当から電話。
担『私は法律にまったく疎いので分からないのですが、最低賃金の減額許可書に
「許可の有効期間は、令和3年8月12日から令和4年4月30日までとする。」 と書いてあります。
もし、「最低賃金の減額許可の効力が令和3年8月12日から発生する」という意味なら、
8月11日までの賃金はもっと高くなるはずなのですが…。』
私『本文に「令和3年6月4日付けをもって…許可する」と書いてありますよ。
だから、最低賃金の減額は6月4日に遡って許可されることになりますよ。
許可書が出たのは8月12日だから、その許可書の有効期間は8月12日からだけど、
許可の効力は6月4日に遡って発生しているのじゃないの?
つまり、「6月4日に遡って許可する」という意味の許可書が「8月12日に出た」ということなのでしょう?』
担『本当に法律に疎いものですいません。その点を基準監督署で聞いてきてもらえないでしょうか?』
私『担当は基準監督署の〇〇さんですよ。そちらに問い合わせてください。』
担『私は申請の状況や具体的内容を知りませんので、申請者さんの方で聞いていただくのが一番なのです…。』
私『それなら、基準監督署の〇〇さんからそちらへ説明してもらえばいいのですね?』
担『いえいえ、〇〇さんに説明してもらったことを申請者さんが私の方に連絡してもらえば良いのです。』
労働局と基準監督署は仲間同士なのに何を遠慮しているのだろう。
「縄張り」のようなものがあるのだろうか…。
それにしても、労働局の助成金審査係が「法律に疎くて、最低賃金の減額許可の効力発生時期を知らない」なんて!
そう不思議がりながら、基準監督署の担当の〇〇さんに面会してこの点を質問すると、
〇〇さんは平気な顔をして答えました。
『はい、減額許可は許可書の交付された令和3年8月12日から効果を生じます。
8月11日までの賃金には最低賃金の減額が適用されません!』
・理由
その理由は簡単明瞭。
最低賃金法7条の「都道府県労働局長の許可を受けたときは」の
「許可を受けた」とは「労働局長が許可をしたとき」つまり「許可書の交付日」のこと。
その許可が「以前に遡ること」はない。
事務マニュアルを調べてみると「そのようなこと」が書いてあります。
〇事務マニュアル「⑼ 許可の有効期間」P45~P46
「許可書には、許可の有効期間を附款として付するとともに、次の事項に留意すること。
許可の有効期間の起算日は、許可書の決裁日とすること。
なお、許可の効力は申請者に許可の事実が伝達され、申請者がこれを了知したときに生じることから、
必ず、決裁日に電話で申請者に通知し、局は、最低賃金の減額特例許可台帳様式(局用)の備考欄に、
署は、前記Ⅱの4の受付・処理経過簿にその日付及び相手方の職氏名を記載すること。」
つまり、許可の効力発生は許可書交付以降になり、効力発生が遡ることはない。
〇事務マニュアル「Ⅴ-2許可書の作成要領 」P42
「⑵ 許可書の日付
・許可書の日付は、許可の決裁日とすること。
⑶ 「令和 年 月 日付けをもって最低賃金法第7条の規定に基づく申請のあった
○○○○に対する最低賃金の減額については、下記の附款を付し、次のとおり許可する。」について
・日付は、許可申請書の受理日とすること。」
つまり、「令和〇年〇月〇日付けをもって」という文言は「令和〇年〇月〇日に申請のあった」という意味。
だから、「令和 年 月 日付けをもって最低賃金法第7条の規定に基づく申請のあった
○○○○に対する最低賃金の減額については、下記の附款を付し、次のとおり許可する。」は
「令和 年 月 日に最低賃金法第7条の規定に基づく申請のあった
○○○○に対する最低賃金の減額については、下記の附款を付し、次のとおり許可する。」という意味。
結局「 令和〇年〇月〇日付けをもって …許可する」という意味ではない。
それなら、紛らわしい書き方をせずに、
分かりやすく「 令和〇年〇月〇日に申請のあった 」と書けばよいじゃない!
「紛らわしい,誤解することがある」と思うからわざわざマニュアルに説明してあるのでしょう?
それとも、「紛らわしい表現を使う」必要があるの?
・使用者の対策
・最低賃金の減額許可が出る前に実地調査があります。
・その実地調査ではその労働者がその断続的労働に実際に従事していることが必要です。
・減額許可書が出ていないので、その賃金には最低賃金の減額が適用されません。
それなら、断続的労働に1日だけ従事させて実地調査をしてもらい、
減額許可書が出てから本格的に従事させればよい。
こうすれば、最低賃金が減額されない高い賃金を支払うのは1日分だけでよい。
使用者はこうするでしょう。
そうなると、労働者は減額許可書が出るまで働けないことになります。
だから、「減額許可の効力が許可書の交付日から発生する」ことを説明しないのです。
・仕組まれた罠
そうだったのです。
全て仕組まれていたのです。
〇その仕組みは
・まず、申請時に「許可書が出るまでは最低賃金が減額されないこと」を説明しないで、
「労働者を業務に付かさせてから実地調査をする」。
↓
・使用者は「まさか、その賃金が減額されないものになる」とは思わない。
使用者は「許可書が出れば、申請日や実地調査日から最低賃金が減額される」と誤解してしまう。
↓
・こうしておけば、「使用者が許可書が出るまで労働者を働かせない」ことを防げる。
・次に、許可書交付のときに「許可書が出るまでの今までの賃金は減額されない」ことを説明しない。
・そして許可書には 「〇〇年〇月〇4日(※申請日)付けをもって…許可する」 という紛らわしい文言。
↓
・こうして、使用者に「申請日に遡って許可された」と誤解させたままにしておく。
↓
・使用者は「申請日(実地調査)~許可書交付日」に支払った賃金は「減額した賃金でよかった」と思い清算しない。
↓
・これは「その労働者には」気の毒だけど、
そうしないと、本記事のような「許可書が出るまでの賃金は減額されないゾ!注意!」の声が上がり、
将来にわたって全国的に「働かせるのは実地調査の日だけ、あとは許可書が出るまで働かせない」ことになる。
そうなったら、多くの労働者の労働の機会を失わせることになる。
↓
・労働者が文句を言ってきたり、助成金申請でチェックされた場合は
使用者に「本当のことを説明して」減額されない賃金を支払わせればよい。
↓
・労働者も使用者と同じく「許可書が出るまでは減額できないこと」を知らないので文句を言ってくることはない。
また、助成金申請の場合は使用者に助成金が入るので、使用者に高い賃金を支払わせてもよいだろう。
これで、「労働者の雇用機会をなくならないし、自分たちも嘘をついたことにはならない」。
本当に「せこくて、陰険な、責任逃れ」のやり方です。
何も知らない労働者には「正当な減額されない賃金が支払われない」。
何も知らない労働者は基準法で認められている権利が害されている。
労働者の権利を護る労働基準局や労働局が、それを知っていて知らないふりをしているのです。
許可申請のときも許可書を交付するときも
「許可書が出るまでは減額できません。通常の賃金を支払ってください。」と説明し、
厚生労働省のHPではこう注意喚起しなければなりません。
「最低賃金の減額許可は許可書の出た日から効力が発生します。
使用者は減額許可書が出るまでの賃金を賃金を減額されない通常の賃金で支払ってください。
労働者は許可書が出るまでの賃金が減額されていた場合は使用者に減額されない賃金を請求しましょう!」
〇だから、助成金の審査担当が基準監督署に直接問い合わせをせず、「聞いてきてくれ」と言ったのです。
助成金担当者は「最低賃金の減額許可の効力が許可書の日付から生じること」、「それが労働局のやり方であること」、「使用者が減額許可は遡って生じると誤解していること」をすべて知っていたのです。
だから、「基準監督署で聞いてきて、自らその誤解を解いてほしい」と言っていたのです。
助成金担当者に連絡
担『どうでした?』
私『減額許可の効力は許可書が出たときから生じ、許可書が出る前については減額されないということでした。』
担『そうですか…。』
私『それで、許可書が出た8月12日より前の分については「減額されない最低賃金で計算した日当」を支払いますが
どのようにすればいいのですか?』
担『清算分を手渡しで支払ったり、今月分の給料に加算したり、皆さん「いろいろ」ですね。
こちらとしては、その分を清算したことが分かればいいのです。』
何が『法律に疎いので…』だ!
「減額許可の効力が許可書の日付から発生し、申請日に遡らない」こと知っていたンじゃないか!
そのような清算事例を何件も扱っているのじゃないか!
みんな「グル」なのです。
結局、二人に差額賃金 6650円/日を一カ月分支払いました。
〇皆様!最低賃金の減額許可には注意しましょう。
使用者の皆様!
その労働者を働かせるのは「実地調査のための1日だけ」ですよ!
あとは、1カ月休ませて「最低賃金の減額許可が出てから」働かせましょう。
もちろん、募集のときも雇用のときもそのことを明示しておきましょう。
労働者の皆様!
減額許可書が出るまでは最低賃金は減額されませんよ!
実地調査を受けてから許可書が出るまでは1カ月。
その間は最低賃金が減額されないので賃金はもっともっと高いものなります。
使用者に言って清算してもらいましょう。
d.最低賃金法違反はどうなるか?
・最低賃金法の規定
〇最低賃金法には罰則があります。
・40条
「第4条第1項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、
50万円以下の罰金に処する。」
・4条1項
「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。」
〇労働基準監督官の権限は
・33条
「労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法の規定による司法警察員の職務を行う。」
〇最低賃金法違反の成立時期
・最低賃金法違反の成立時期は「最低賃金以上の賃金を支払うべきときに支払わなかったとき」。
・要するに「減額許可書が出るまでの賃金を支払うとき」です。「許可書が出たとき」ではありません。
・例えば、「月末締めの翌月10日支払い」で、
7月15日に実地調査、
その後ずっと勤務。
8月10日に「7月15日~7月31日」分の賃金支払い。
8月15日に許可書交付。
この場合犯罪が成立するのは「8月10日の給料日」で「許可書の出た8月15日」ではありません。
もし許可書交付のときに担当から「今までの賃金は減額されないから、減額されない賃金を支払ってください」と
説明されても既に犯罪は既に成立してしまっています。
だから、「事前の説明,許可申請時の説明」が絶対に必要なのです。
これが、「8月20日払い」なら最低賃金法違反が成立するのは8月20日です。
もし、許可書交付の8月15日に担当から「今までの賃金は減額されないから、
減額されない賃金を支払ってください」と説明されれば、最低賃金法違反をしなくても済みます。
だから、許可書交付のときの説明も必要なのです。
・どうなるか?
★刑法をやったことのない方はまず「用語の基礎知識-犯罪成立」を読んでください。
〇実地調査のために1日だけ働かせて、減額されていない賃金を支払った場合
・まったく問題はありません。
〇「申請日に遡って許可される」と誤解して、許可書交付日まで減額した賃金を支払っていた場合
・「犯罪の成立」で言えば「行為者を非難できるかどうか」の責任判断の段階です。
・問題になるのは、申請の流れや減額許可書の文言から「申請時に遡って許可された」と誤解していたこと。
「誤解していたこと自体」は「(違法性阻却事由に関する)法律の錯誤」で「行為者を非難できる」とされます。
・しかし、その誤解が
「申請時に何の説明もなかったこと」,
「その労働者を就労させてから実地調査をしたこと」,
「許可書の紛らわしい文言」,
「その文言を誤解する可能性が充分あるのに、交付時に何の説明もなかったこと」が原因とはなっているので、
「行為者が許可書の文言を誤解しないで、減額されない賃金を支払うことが期待できたどうか」
(適法行為の期待可能性)」が問題とされます。
そして、「通常人なら誤解せず、減額されない賃金を支払うだろう」と判断されれば
「行為者を非難できる」として犯罪成立。
「通常人でも誤解して、減額した賃金を支払うだろう」と判断されれば犯罪不成立となります。
・多分、「通常人でも誤解してしまう」と判断されて犯罪不成立でしょう。
・もし、犯罪成立となっても「それが初回であり、判決時までに清算していれば」刑罰は課せられないでしょう。
簡単に言えば、
・「申請の流れや許可書の文言を誤解したから」といって犯罪は免れない。
・しかし、「説明なしで、あの手続の流れ。そしてあの許可書で説明なし」なら誰でも誤解してしまう。
・だから、使用者を非難することはできないので、最低賃金法違反の犯罪は成立しない。
ただし、最低賃金法違反の犯罪が成立しない場合も、賃金は清算しなければなりません。
「最低賃金の減額が許可されるまでは最低賃金は減額されない」のは労働者の権利です。
これは「使用者に最低賃金法違反が成立するかしないか」には関係ありません。
使用者が清算しない場合は労働者が賃金請求をしなければなりません。
賃金請求の消滅時効は5年です。 → こちら
〇「減額許可は許可書の出たときから」を知っていて、減額した賃金を支払っていた場合
・この記事を読んだ人ですね。
・これはアウトです。
・「申請の流れと説明なし」「許可書の紛らわしい文言と説明なし」を持ち出して
「適法行為を行うことが期待できない」と主張できますが 、「初めて」でない限りその主張は通りません。
〇結局
「減額許可書が出る前に最低賃金を減額していた」場合、
「初めて」なら最低賃金法違反は成立せず、成立したとしても50万円以下の罰金は課せられません。
ただし、最低賃金法違反が成立する場合も成立しない場合も、
許可書が出るまでの賃金は「減額しない賃金で計算し直して清算」しなければなりません。
・厚生労働省の犯罪性
〇厚生労働省に犯罪性はないのでしょうか?
・「申請時から許可される」と誤解されるような手続と、
「誤解される可能性があると」知っていて説明しないこと。
「申請時に遡って許可された」と誤解させるような許可書の文言と、
「誤解させる可能性があると」を知っていて説明しないこと。
・多くの場合労働者が問題にしないので「最低賃金より低い賃金が支払われて」労働者の権利が害されること。
これらについて、厚生労働省や労働局に犯罪性はないのでしょうか?
「誤解した使用者は最低賃金法違反が問題となり、
誤解させた厚生労働省や労働局は最低賃金法違反が問題とならない」のはおかしいじゃないか!
当然、そう思いますよね。
しかし、彼らはその点を計算済み。
そこを説明してみましょう。
〇正犯と共犯
犯罪を実行した者には次の種類があります。
・犯罪の実行行為をした者が正犯、これを助けた者が共犯。
・共犯の中には、共同正犯,共謀共同正犯,教唆版,幇助犯。
・共同正犯とは犯罪の実行行為を一緒に実行した者でこれは正犯。 → こちら
・共謀共同正犯とは「犯罪の実行を共謀した者」で共謀者の誰かが犯罪を実行した場合。
犯罪の実行行為を一緒に実行してはいないが「実行したもの」として正犯。 → こちら
・教唆犯とは「犯罪を行う意思のない者を唆して、犯罪を行わせた者」で正犯ではないが、罪は正犯と同等。こちら
・幇助犯とは「見張りをしたり、勇気づけたりして」正犯の実行を助けた場合。これは正犯より罪が軽い。こちら
ここで、
・正犯は「最低賃金の減額許可書が出る前に、減額した賃金を支払った」使用者。
・犯罪の実行行為は「減額許可書が出る前に減額した賃金を支払ったこと」
・厚生労働省や労働局は「犯罪の実行行為を一緒にやっていない」し「その共謀もしていない」ので
共同正犯でも共謀共同正犯でもない。
・厚生労働省の手続で「実地調査のためにその労働者を就労させること」や「誤解させるような許可書の文言」。
そして、そのことについて何の説明もしないこと。
これらが教唆行為や幇助行為にあたるか該るかどうかが問題になります。
しかし、教唆犯や幇助犯は正犯が成立しないと成立しません。
既に説明したように使用者に最低賃金法違反が成立しないので、
それらが教唆行為や幇助行為に該るとしても教唆犯や幇助犯は設立しません。
では、間接正犯はどうでしょう。
〇間接正犯
間接正犯とは人間を道具として使って犯罪行為をすることです。 → こちら
道具とは「意思を持たず、道具を使う者の思う通りの結果を起こすもの」で人間でも道具になります。
例えば、
a.幼児や精神病者のように「善悪の判断がつかない者」
b.催眠術や強い脅迫を受けて「そうすることを抵抗できない程に強制された者」
c.情を知らない者・それが正当防衛であると思っている者のように、
「故意がない者・犯罪 にあたらない場合であると思っている者」
d.刑事未成年者
「申請日に遡って許可される」と誤解させるような手続をさせ、そう誤解させるような文言の許可書を渡し、
「そう誤解される可能性がある」のを知っていては何も説明しない結果、
「申請者が誤解して、最低賃金より低い賃金を支払い」最低賃金法違反を犯したのは、
「犯罪にあたらない場合であると思っている者(c)」を道具として使ったことにはならないのでしょうか?
残念ながらそうなりません。
「道具」と判断されるためには「必ずその犯罪結果が生じる場合」でなければなりません。
この場合は「申請者が誤解しなければ」最低賃金法違反を犯さないからです。
結局、厚生労働省や労働局の犯罪性は認定されません。
〇行政としての責任
しかし、厚生労働省の定めた事務手続や「許可書の効力発生時期について説明しないこと」が
使用者や労働者の誤解を産み、
「使用者や労働者が気付かなければ、最低賃金未満の賃金が支払われる状態を作ることになる」ので
最低賃金法の目的に反することは明らかです。
それらに犯罪性はなくても行政としての責任は問われるべきです。
その責任追及は政治の場で行われることになります。
※最低賃金法1条(目的)
「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、
もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、
国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」
次に、断続的労働の適用除外許可について検討してみましょう。
今度は、厚生労働省を司法の場に引きずり出せるかもしれません。
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