「まだ頑張りますか?」
わが国では「法律に違反しなければ何をやっても自由」です。
商売も同じ。
「法律に定めるルールに違反しなければ何をやっても自由」です。
この「商売ルール」の一つに独占禁止法があります。
独占禁止法では「えぐいやり方」が禁止されています。
今回取り上げる「えぐいやり方」は「安売り競争」。
津市業務調達で「止まらない安売り競争」です。
独占禁止法が禁止する安売り競争にはペナルティが課せられます。
刑事罰,課徴金,排除措置命令,損害賠償。
これだけではありません。
公正取引委員会の調査過程で労働基準法違反や警備業法違反が出ればペナルティはどんどん広がっていきます。
警備員から「一人500万円~800万円」の適正賃金差額を請求されたら倒産してしまいます。
『最低落札価格はありません。1円でも構いません。』
『違法労働には関知しませんのでご心配なく。』
『国連のビジネスと人権に関する指導原則なんかまったく気にしてません!』
津市の目的は「受注者の責任で安売り競争をさせること」。
自分に責任が及んでくれば「必ず手のひらを返して」受注者に責任を押しつけます。
津市に踊らされて安売り競争をしている皆様、そろそろ目を覚ましましょう。
全責任を負わされるのは「あなた」です。
本稿では「独占禁止法で禁止されている安売り行為」を次の順で説明します。
・独占禁止法とはどのようなものか
・独占禁止法が禁止する排除型私的独占と不当廉売
・津市業務調達の状況と独占禁止法違反
これらの説明は「さわり」だけ。
「もう少し知りたい方」は、
・独占禁止法については公正取引委員会のHP → こちら,こちらもお勧め
・独占禁止法の解釈と実際の運用 については 公正取引委員会ガイドライン → こちら
・書籍なら → 独占禁止法・第4版 菅久修一編著 商事法務(2019年改正対応)
※独占禁止法は直近では2019年に改正されています。 → こちら
この改正は課徴金に関するもので初心者にはあまり関係ありません。
その前の改正は2016年です。
2016年以降に改訂された書物なら実用に耐えるでしょう。
今回参考にしたのは「独占禁止法第3版・菅久修一編著・2018年・商事法務発行」。
ブックオフで220円でした。
なお、以下では独占禁止法を「独禁法」、公正取引委員会を「公取委」と記述します。
1.独占禁止法を簡単に
a.独禁法の目的
独禁法の目的は「公正で自由な競争を促進する」こと。
そのために「事業活動の人為的な制限や拘束を排除する」こと。
「事業者各自が自らの商品の価格や生産数量を決め、新たな市場に挑戦し、創意工夫をして消費者から選ばれる商品を供給しようと自由に競い合うことが、消費者に利益をもたらし市場が発展する」と考えられているからです。
(1条)
この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、
事業支配力の過度の集中を防止して、
結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、
公正且つ自由な競争を促進し、
事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、
雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
○独禁法の規制するのは「事業活動」
・事業とは「対価を得て,反復継続して商品の供給または役務を提供すること」
↓
・「対価」とは反対給付 → 対価を受けない 無償サービス,寄付行為は入らない。
・「反復継続」とは「業として行っている」こと、一回限りは入らない。
・その要件を満たせば地方公共団体も国も独禁法の適用を受けます。
※都営芝浦と畜場事件(最高裁判決平成元年12月14日)
「何らかの経済的利益の供給に対応し反対給付を反復継続して受ける経済活動
その主体の法的性格は問わない」
公営屠蓄場の使用料金が民営屠蓄場の使用料金より大幅に安かった事案
b.独禁法が禁止する行為
・不当な取引制限(3条)
・私的独占(3条)
・不公正な取引方法(19条)
・企業結合の規制(10条,13条~18条)
○不当な取引制限とは
「お互いに競争しないようにする」こと。(2条6項)
価格,生産数量,販売地域,取引相手などをお互いで決めるカルテル(企業連合)や
これを公共入札で行う入札談合。
そこには「競争」が存在しないからです。
○私的独占とは
「他の事業者の事業活動を排除したり支配したりして自由競争を制限すること」(2条5項)
・「排除行為」を使うのが排除型私的独占。
事業者が単独または他の事業者と手を組み、
不当な低価格販売,排他的取引などの手段を用いて
競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害したりして市場を支配すること。
・「支配行為」を使うのが支配型私的独占。
有力な事業者が、
株式の取得,役員の派遣などにより、
他の事業者の事業活動に制限を加えて市場を支配すること。
○不公正な取引方法とは
・公正な競争を害する行為。
・「私的独占や不当な取引制限の禁止」を補い、これらを未然に防止するもの。
・不公正な取引方法は独禁法に定められたものと公取委が指定したものがあります。(2条9項)
○企業結合の規制とは
・会社の株式取得,合併,分割,共同株式移転,事業の譲り受けなど(企業結合)により
競争が制限される場合にその企業結合を禁止すること。(10条,13条~18条)
・一定規模の企業結合については届出義務があり公取委が審査しています。
c.罰則,行政処分,救済
○刑事罰(89条~100条)
一般の事業者について注意しなければならないのは89条。
・私的独占,不当な取引制限違反(3条違反)が対象
・事業者団体の競争制限・8条1号違反(8条1号違反)が対象
・5年以下の懲役または500万円以下の罰金
・未遂を罰する
・89条,90条,91条は公取委の告発が必要 ( 96条 )
・公取委が訴追権を持つ。
・労基法違反について監督署が訴追権を持つのと同じです。
※どのような事案について刑事告発をするかについて → 平成17年・公取委・告発方針
○課徴金
・独禁法違反をした者に対し一定の算定基準により金銭的不利益を課すもの。
・その違反行為で得た利益を吐き出させるという意味もあります。
※こちら
対象となるのは
・不当な取引制限(7条の2)
・支配型私的独占(7条の9第1項)
・排除型私的独占(7条の9第2項)
・法定の不公正な取引方法(20条の2~20条の6)
刑事罰(懲役や罰金)は裁判が必要なのでなかなか課せられませんが、こちらは行政処分なのでガンガンやられます。
○排除措置命令(7条,8条の2,20条)
公取委が違反行為を差止め,違反行為を排除するために必要な措置を命ずる。
○警告,指導,注意
独禁法違反の証拠が得られなかったが独禁法違反の疑いがある場合は
関係事業者に対して警告を行う(審査規則26条),是正措置をとるよう指導する。
独禁法違反の証拠が得られなかったが独禁法違反につながるおそれのある行為があった場合は
未然防止のための注意を行う。
○差し止め請求(24条)
事業者団体が事業者に不公正な取引方法をさせようとしている場合(8条5号違反),
事業者が不公正な取引方法を行っている場合(19条違反)
その行為によってその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者(消費者,事業者)は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、
(裁判所に対して)その侵害の停止又は予防を請求することができる。
○損害賠償
独禁法違反の行為によって被害を受けた者は損害賠償請求ができる。(25条)
・この賠償責任は無過失責任(25条2項)
※「民法709条(不法行為)による損害賠償請求」もできますが、加害者の故意・過失が必要です。
・排除措置命令・課徴金納付命令が確定したあとに請求できる(26条1項)
・消滅時効は3年(26条2項)
○申告(45条)
・誰でも、
・独禁法に反すると思われる事実がある場合は
・公取委に「適切な措置を取るよう」求めることができる。(45条1項)
・この申告は単なる情報提供で、公取委が動くかどうかは公取委の判断によります。
・もちろん「独禁法違反で被害を受けている者」も申告できます。
被害を受けている者からの申告なら公取委が動く可能性が強くなります。
※「申告」をしたい方は → こちら
※公正取引委員会の活動状況については → こちら