「まだ頑張りますか?」
- 独占禁止法を簡単に
- 不当な取引制限と排除型私的独占
- 不公正な取引方法・不当廉売
- コスト計算,落札状況,津市がやらなければならないこと
2.不当な取引制限
a.不当な取引制限とは
・「お互いが競争をしないこと」を約束すること。
・カルテル → 商品価格や供給量などを同業者間で決めること。
・入札談合 → 入札参加者で受注する者決め、他の者はその者よりも高い値段で入札すること。
(2条6項)
この法律において「不当な取引制限」とは、
事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、
他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、
公共の利益に反して、
一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
b.成立要件で注意すること
○合意方法
・「紳士協定」や「暗黙の了解のもとに行われる場合」も含む。
○他の事業者と共同して
・意思連絡が必要。
・ある者が他の者の行動を予測しこれと歩調を揃える意思で同じ行動をした場合でも「意思連絡あり」。
・意思連絡の内容は完全に一致している必要はない。競争に影響を与えるものであればよい。
・意思連絡は全員が顔を揃えて行われる必要はない。他の者を介して間接的に行われるものでもよい。
○競争の実質的制限
・市場の競争機能を害すること。
・市場の競争を完全に排除し支配することは不要。
「受注予定者が決まっていたが部外者に落札された」場合でもよい。
・市場の競争機能を害する状態が出来上がればよい。
入札談合で合意が成立すれば既遂に達する。
※カルテルや入札談合については数多くの事件があり、書物では詳しく説明されています。
公取委の「入札談合の調査」が入ったときはしっかり研究してください。
3.排除型私的独占
排除型私的独占の成立要件は次の通り
① 事業者が単独にまたは共同して
② 他の事業者の事業活動を排除し(排除行為をしたこと)
③ 一定の取引分野における競争を実質的に制限する。
④ ②と③に因果関係があること。(条文の「により」)
⑤ 公共の利益に反していること。
(2条5項)
この法律において「私的独占」とは、
事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、
その他いかなる方法をもつてするかを問わず、
他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、
公共の利益に反して、
一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
これら要件の中で注意しなければならないものを説明します。
a.事業者が単独にまたは他の事業者と結合・通謀し
・他の事業者と一緒になってやったのではなく「単独でやった」場合も含みます。
b.「他の事業者の事業活動を排除する行為」をしたこと
イ.排除する行為とは
・他の事業者の事業活動の継続を困難にさせたり、新規参入者の事業開始を困難にさせたりする行為であって、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにつながるさまざまな行為
・実際に他の事業者が事業活動を続けられなかったり(その市場から排除されたり)、
新規参入が阻止されたりすることは必要ない。
その可能性の高い行為なら排除行為に該る。
・事業者の「事業活動が排除されること」で「事業者が排除されること」ではない。
「事業者が倒産したり事業経営全体に支障が生じたりする」可能性の高い行為でなくてもよい。
・「そのような行為がなされれば」排除行為となる。
「排除する目的が何であろうと」「排除するつもりがなくても」排除行為となる。
・事業者が自らの企業努力で低価格の商品を供給したことにより、その企業努力をしない事業者が排除されるようになっても排除行為には該らない。
※参考.排除型私的独占ガイドライン第2の1-(1) → こちら
・排除行為とは,他の事業者の事業活動の継続を困難にさせたり,新規参入者の事業開始を困難にさせたりする行為であって,一定の取引分野における競争を実質的に制限することにつながる様々な行為をいう。
・事業者が自らの効率性の向上等の企業努力により低価格で良質な商品を提供したことによって,競争者の非効率的な事業活動の継続が困難になったとしても,これは独占禁止法が目的とする公正かつ自由な競争の結果であり,このような行為が排除行為に該当することはない。
・事業者の行為が排除行為に該当するためには,他の事業者の事業活動が市場から完全に駆逐されたり,新規参入が完全に阻止されたりする結果が現実に発生していることまでが必要とされるわけではない。
すなわち,他の事業者の事業活動の継続を困難にさせたり,新規参入者の事業開始を困難にさせたりする蓋然性の高い行為は,排除行為に該当する。
・事業者が市場の状況等から事業経営上必要であると判断した行為であっても,そのことをもって排除行為に該当しなくなるわけではない。
・また,行為者が他の事業者の事業活動を排除する意図を有していることは,排除行為に該当するための不可欠の要件ではない。
しかし,主観的要素としての排除する意図は,問題となる行為が排除行為であることを推認させる重要な事実となり得る。さらに,排除する意図の下に複数の行為が行われたときには,これらの行為をまとめて,排除する意図を実現するための一連の,かつ,一体的な行為であると認定し得る場合がある。
・なお,「他の事業者の事業活動を排除する」行為には,行為者が当該他の事業者に対して直接行うものだけでなく,行為者がその取引先を通じて間接的に行うものも含まれる。さらに,複数の事業者が結合し,通謀するなどによって行うものも含まれる。
ロ.排除行為の例
排除行為の代表的なものは
・商品を供給しなければ発生しない費用を下回る対価設定(コスト割れ供給)
・排他的取引
・抱き合わせ
・供給拒絶・差別的取扱い
もちろんこれらだけ限るわけではありません。
(あとで説明する不公正な取引方法のように例示していません。)
※参考. ガイドライン第2-1-(2)
代表的な排除行為として
・商品を供給しなければ発生しない費用を下回る対価設定
・排他的取引
・抱き合わせ
・供給拒絶・差別的取扱い
の4つを挙げて,それぞれが排除行為になる場合の判断基準を定めています。
ここでは「コスト割れ供給」を説明します。
●コスト割れ供給を禁じる意味
※ ガイドライン第2-2
企業努力による価格引き下げ競争は「安くて品質のよい商品を提供して顧客を獲得する競争(能率競争)」の中心となっています。
しかし「コスト割れ供給」はそれを続けても損失が増えるだけで経済的利益はありません。
「コスト割れ供給」から得られる利益は「競争者を排除すること」だけなので、これを禁止しても能率競争を害することにはなりません。
●コスト割れの基準
「商品を供給しなければ発生しない費用」=「その商品1個を供給しない場合にかからない費用」。
※参考.平均回避可能費用
商品の追加供給をやめた場合に生じなくなる、商品固有の固定費用と可変費用を合算した費用を追加供給量で除した「商品1個あたりの費用」
具体的には
その商品1個を作る材料費,製造費,物流費などは含まれますが、会社の経理部の人件費や広告費はもともと必要な費用なので含まれません。
しかし、コスト割れ商品を大量出荷するための製造設備の増強,経理部の人件費や広告費の増加による費用は含まれます。
この点は公取委が具体的状況に応じて判断します。
宿直業務委託で考えれば
その施設に配置する警備員の賃金,社会保険負担,制服・装備品,寝具,宿直室の冷蔵庫やTV,新任教育・現任教育の時間給などが含まれますが、事務処理費用や教育費用など「警備員が増えても増大しない費用」は含みません。
もちろん、そのコストは合法的なものでなければなりません。
「違法賃金や違法労働によるコスト引き下げ」は「企業努力によるもの」ではありません。
「最低賃金より低い賃金しか払っていないからコスト割れではない」と主張することはできません。
どのような費用が「商品を供給しなければ発生しない費用」となるかについては
※ ガイドライン第2-2-(1)
●「そのコスト割れ供給」に「他の事業者の事業活動を排除する可能性(排除効果)」があること
コスト割れ供給をしても「他の事業者の事業活動を排除する可能性のないもの」であれば私的独占になりません。
「排除効果があるかどうか」はさまざまな点から総合的になされます。
※ ガイドライン第2-2-(2)判断要素
b.排除行為と競争の実質的制限に因果関係があること
「他の事業者を排除する可能性のある排除行為」を市場支配力のない事業者が行っても「他の事業者を排除する危険」がありません。
このような場合は私的独占となりません。
この意味で「排除行為と競争の実質的制限には因果関係か必要」になります。
この点を考えてガイドラインでは「私的独占で優先的に取り扱う場合」を定めています。
1.行為開始後において行為者が供給する商品のシェアが1/2を超える事案で
2.国民生活に与える影響が大きいと考えるもの
※ ガイドライン「2競争の実質的制限
もちろん、「シェアが1/2」でなくても私的独占とされる場合もあります。
全ては公取委の判断です。
なお、排除型私的独占と言えない行為は「不公正な取引方法」で禁止されています。