『今までの警備業者はこちらの言うがままだったのに!』
●津市会計規則27条の検討
●事例①なんでもかんでも「契約印!」
●事例②還付請求で「署名ではダメ、記名+認印が必要」
2.事例① なんでもかんでも「契約印!」
これは現在宿直業務を行っている「ある支所」でのことである。
a.業務担当者届にも契約印!
当方が事業者として使っている印章は契約印と認印 ( 角印 ) 。
国や県や市町村に予め登録して入札や契約に使うのが契約印。
認印 ( 角印 ) は雇用契約書,各種文書,請求書や領収書に使っている。
津市業務委託では1か月の業務が終了すると受注者は次の書類を提出する。
①委託業務実績報告書 ( ◯月◯日~◯月◯日の1か月間業務を行いましたというだけの報告書 )
②請求書
支所は①をチェックして「1か月間業務が行われたこと」を確認して次の書類を出す。
③検査合格通知書
その後、1か月分の委託料が振り込まれる。
領収書は不要。
当方は以前に2か所で通算4年間、同様の業務を受注し行ってきた。
そこでは、①と②については「記名+認印 ( 角印 ) 」で受理されてきた。
しかし、当支所では「記名+契約印」が必要とのこと。
「支所が変ればやり方も変わるのか…」と最初の月は「記名+契約印」で提出した。
新しい警備員を雇ったので「こういう名前の警備員を配置します」という届けを支所に出した。
この届けには「記名+認印 ( 角印 ) 」。
ところが総務の担当は「記名+契約印」でなければダメという。
私はその担当に説明した。
『事業者にとって契約印は個人の実印のようなもの。
あちらこちらに気軽に押すものではない。
契約印の印影が出回れば、それだけ偽造の危険も大きくなる。
契約印が必要と言うのならその根拠を示してほしい。
津市の内規でも規則でも何でもよい。』
その担当は『いいですよ!』と胸を張ったが、そのまま何の連絡もなかった。
b.『これではお支払いできません』と請求書を突き返す
2か月目の業務が終了。
まだ、「業務担当者届に契約印が必要の根拠」は示されない。
私は2か月目の委託業務実績報告書と請求書を「記名+契約印」ではなく「署名」で提出し、
重ねて「契約印が必要な根拠を示すよう」要求した。
2~3日して総務の別の担当が警備室にやって来た。
「契約印が必要の根拠」としたのが上で説明した津市会計規則。
そして、私が提出した「署名だけの」委託業務実績報告書と請求書を突き返して、こう言った。
『これではお支払いできませんから。』
この言葉で私の戦闘モードがON。
何を偉そうに。
「支払わない」と言えば業者が引き下がるとでも思っているのか!
そもそも「支払う」のは我々の収めた税金からじゃないか!
『それじゃあ闘いましょう。』
私は突き返された実績報告書と請求書を受け取った。
「上からものを言う」のは相手を見てからにした方がよい。
パワハラを問題にしてやろうか、それとも刑罰のある公務員職権濫用罪 で?
※ 刑法193条(公務員職権濫用)
「公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、
2年以下の懲役又は禁錮に処する。」
一度、刑法193条で告訴をしてみたいものだが…。
上から目線の職員には「こちらの薬」の方が良く効くかも。
c.「契約印が必要」の根拠
「これではお支払いできません」君が示した根拠は次の通り。
●「業務担当者届と実績報告書に契約印が必要」の根拠
市町村入札事務を行う機関に提出した「使用印鑑届」の記載。
「上記の印鑑を入札,見積,契約の締結,代金の請求及び受領,その他契約に関して使用します。」
「業務担当者届や実績報告書は “その他契約に関する事項“だから契約印が必要」と言いたいらしい。
( 風が吹けば桶屋が儲かる )
こんな子供だましが通用するわけはない。
これは「その他契約に関して押印しなければならないときにはこの印鑑を使う」ということで
「その他契約に関してこの印鑑を押印しなければならない」ということではない。
こちらは1ラウンド開始10秒でKO。
●「請求書に契約印が必要」の根拠
上で説明した津市会計規則27条と28条を持ち出してきた。
・27条4項
「請求書は次の要件を備えていなければならない。」
・27条4項2号
「債権者の住所,氏名,及び押印」
・28条1項1号
「請求書に用いる請求印は、契約書がある場合にあっては、
当該契約書等に用いた印鑑と同一のものでなければならない」。
「これではお支払いできません」君はこれでKOを狙ったのだろうが、残念ながら27条5項がある。
27条5項
「前項2号及び4号の規定にかかわらず、
正当な債権者から提出された請求書であると収支命令者が特に認める場合は
当該請求書への債権者の押印等を省略することができる。」
代表者の私の署名があり、顔を良く知られた私が請求書を持っていくのだから
「正当な債権者から提出された請求書」だと認められ、「押印不要」となるだろう。
押印不要だから28条1項1号の「請求書に押印するのは契約書に押印した印鑑」は関係なくなる。
反撃のカウンターパンチ。
※押印見直しマニュアル8頁「押印に代替する手段」抜粋
・本人であることを確認するための書類 ( 運転免許証,マイナンバーカードなど )
・本人のメールアドレスからの提出。
・電話やWeb会議による本人確認
そもそも、27条4項2号が請求書の要件に「債権者の住所,氏名,及び押印」を挙げ、
署名を含めていないことが大問題。
試合は初めから成立していないようだ。
d.上役が火消しに
以上を文書に作成し委託契約の窓口である津市調達契約課と交渉しようとした。
その前に支所の方に「その文書のコピー」を手渡す。
目的は「これから津市調達契約課と交渉するから支所の方も予めの防御を」。
そして、さりげなく「火を消すのなら今の内だよ。」
思惑通り、「この請求書ではお支払いできません」君の上役が警備室にやって来てこう言った。
『但書があるので、署名だけで通るようになんとかやってみます。』
そして、署名だけの委託業務実績報告書と請求書を持って行った。
さすがは管理職。
パワハラや職権濫用罪で騒がれたのでは大変。
「火が大きくなる前に消し止めた」。
その後、請求書を含めすべての提出書類は「署名だけ」となっている。
なお、国では
「地方自治法234条5項があるので、契約書への押印は廃止しませんが、
契約書以外の見積書,請求書,領収書には押印を不要としました。」
( 押印見直しマニュアル28頁 )
ここで「押印を不要とした」のは「記名+押印」の押印を不要としたこと。
「記名+押印」を「署名」にすることではない。
つまり、国では見積書,請求書,領収書では「記名だけでOK」としているのだ。
国はここまで取り組んでいるというのに…。
「美味そうだったのに逃げられたか…。」