「間違ったまま」の警備員の宿直業務

『我々は厚労省の解釈基準の通りにしか動きません。』



適用除外許可再申請の経緯
●『新たに許可申請をする必要なし』
警備員の宿直業務の今後

2.『新たに許可申請をする必要なし』

対応したのはこの前とは別の監督官。
現在の許可を審査した監督官と一緒に実地調査を行った監督官である。

この監督官は「面倒がらずに」こちらが納得するまで1時間以上付き合ってくれた。
これが労働基準監督官の正しい姿勢だろう。

結果としては「増えた業務の実労働時間が、現在の許可の実労働時間でまかなえるから再度の許可申請は必要ない。4月末の減額特例許可の更新審査のときに改めて審査する。」。

どうも監督署にとっての関心事は
「その業務が適用除外許可の要件に反するかどうか」ではなく「その業務により労働者の実労働時間が増えるかどうか」にあるらしい。

結局、再度の許可申請は受理されず、
水道事業所職員の深夜出入りに対応する業務が
適用除外許可の要件である「夜間の継続した4時間睡眠を与えること」に反して違法労働になるかどうか、
戸籍届受理業務や道路障害通報対応が
適用除外許可の要件である「精神的負担の大きい業務でないこと」に反して違法労働になるかどうかについての判断はされなかった。

この監督官の説明から参考になることを拾ってみる。
そして、この問題の解決方法を探してみよう。
※当方の推測でつなげた部分あり

①適用除外許可の再申請ができる場合

(監督官)

適用除外許可の再申請ができるのは「業務内容が大きく変わった場合」。

前回申請の「業務の内容」は
「施設内巡回,開場・閉場業務,戸籍届受理,道路障害情報の担当者連絡,緊急対応,
予定された者に対する鍵受け渡しなど、一般的に「宿直業務」と呼ばれるもの」。
(※前回申請書の記載)

今回は「水道事業所職員の深夜出入に対応する業務が増えた」ということだが、
その業務は前回申請の業務内容に含まれる業務だと考えられる。

来庁者駐車場での交通誘導や女性職員の夜間警護などが追加され
前回申請の業務内容が大きく変わった場合ではない。

そのため「新たに許可申請をするべきorすることのできる場合」ではない。

その業務について新たに許可申請をする場合には
まず、「現許可の取り下げ申請」が必要となる。
今回はその取り下げ申請が認められる場合ではない。

(補足)

監督官は「再申請できる場合として業務の形態が大きく変わった場合」を例示しているが、
業務の形態は同じでも「巡回の経路や回数や所要時間が増えれば」再申請の対象となる。
それらは「適用除外許可の要件に関するもの」だからである。

つまり「適用除外許可の再申請ができる場合」とは
「前回申請時から適用除外許可の要件に関する事柄に変動があった場合」となる。
もちろん、それは「現許可の取り下げ請求」において審査され判定されることになる。

②実労働時間の増加と減額特例許可の再申請

(監督官)

水道事業所職員の深夜出入は1年間で推定30回。(別紙4記録)
警備員が対応するのは「出入口の解錠と施錠」が2回。
そのために必要な実労働時間は5分間。
増加した実労働時間は「5分 × 30回÷365日≒0.5分/日」

実労働時間が30秒増えただけだから現在の許可の実労働時間の「その他」でまかなえる。
つまり労働者の実労働時間は増えていないので「新しく減額特例許可を申請する場合ではない」。

4月の入札で再びこの業務を受注した場合は「減額特例許可の更新手続き」が必要だが、
その時に改めて実労働時間を細かく審査すればよい。

③「夜間の継続した4時間睡眠を害する」かどうかの判断

(監督官)

水道事業所職員の深夜出入に対応する業務が
適用除外許可の要件である「夜間に継続した4時間睡眠を与えること」に反して違法労働になるかどうかは、適用除外許可や減額特例許可の申請があった場合にだけ判断する。

今回は適用除外許可についても減額特例許可についても新しく許可申請する場合ではないので「その判断はできない」。

もちろん、「その業務が契約に含まれるかどうか」については監督署は関与しない。
監督署は「その業務が契約に含まれる」として説明している。

補足

どこか「言いくるめられたような、話をすり替えられたような」気がする。

私が適用除外許可と減額特例許可を再申請する理由は
「水道事業所職員の深夜出入に対応する業務」が増えたことだが、
その業務のために実労働時間数が増えたからではない。
その業務が「適用除外許可の要件を害する業務」だからである。

監督官の言うことは、

〇水道事業所職員の深夜出入に対応する業務は
現在の適用除外許可で申請した業務の種類を変更するものではないから適用除外許可を再申請できる場合ではない。

〇その業務による実労働時間の増加も
現在の減額特例許可の実労働時間内でまかなえるので減額特例許可を再申請する必要はない。

〇適用除外許可も減額特例許可も再申請しないのだから、
監督署はその業務が適用除外許可の要件に反するかどうかについて判断できない。

この論法の「始まり」の「その業務は現在の適用除外許可の業務の種類を変更するものではないから適用除外許可を再申請できる場合ではない」が間違っていないだろうか。
「その業務は適用除外許可の要件に関係するものだから適用除外許可を再申請できる場合」なのではないだろうか?

当方の説明が不十分だったのかもしれないが、
監督署は「労働内容がきつくなったかどうか」より「実労働時間か増えたかどうか」を重視しているようである。

「労働内容がきつくなったから」と適用除外許可を取り消せば労働者の仕事がなくなる。
労働者には「それに見合う賃金が確保されること」の方が大切。

監督官はこのようなことも言っていた。
「適用除外許可は無期限だが、労働内容が変わってくることもあるので減額特例許可は許可期間を区切っている(最長3年)」。
つまり「適用除外許可は大枠の許可、減額特例許可で細かく審査して賃金(減額率)を決めれば労働者の利益を害さない」ということなのだろう。

④戸籍届受理,道路障害情報対応と適用除外許可の要件

●厚労省の挙げる「精神的負担の大きい業務の具体例」

適用除外許可の要件について、厚生労働省の解釈基準に
「精神的負担の大きい業務でないこと」というものがある。

その具体例として「警備業務の監視業務」について次のものを挙げている。
・立哨により行うもの
・必要に応じ出入者の身体や所持品の検査を行うもの
・荷の点検の業務を行うもの
・駐車場等における業務で料金等の徴収の業務または車両の誘導の業務を伴うもの
・常態としてテレビモニター等警備業務用機械装置により監視するもの
・異状事態に対する措置が特に高度の技術又は判断を必要とするもの

断続的労働についてはこれらの具体例が挙げられていないが
監視業務も断続的業務もともに基準法の労働時間の制限を外すものであるので、
「身体の疲労または精神的緊張が少ない業務について許可する」のは同じである。
また、宿直業務には巡視や出入管理など監視業務が含まれている。

そのため監視業務について精神的負担の大きい業務として許可できない具体例は
断続的労働にも当てはまることは当然のことである。

●戸籍届受理手続と道路障害情報対応は適用除外許可の要件に反するか?

(監督官)

戸籍届受理と道路障害情報対応については「厚労省の解釈基準の具体例にないので」、
監督署としては「その業務は精神的負担が大きいので適用除外許可を与えられない」と判断できない。
監督署の判断は厚労省の解釈基準によってしなければならない。

『監督署・監督官が厚労省に精神的負担の大きい業務を提言することはないのか?』

(監督官)


監督官は厚生労働省の解釈基準(労働基準法解釈総覧)に従って実務を行っているので、
通常は監督官から厚労省に提言することはない。

『それでは戸籍届受理や道路障害情報対応が「精神的負担の大きい業務」として例示されることはないのか?』

(監督官)

もちろん、厚労省がそう解釈すれば「精神的負担の大きい業務だから許可を与えてはいけない」場合として例示される。
しかし、それは厚労省が決めることである。

厚労省に国民として意見や要望をすることもできるが、その程度では多分検討されないだろう。
「警備員は戸籍届を単に受け取るだけ」としている自治体もあるから、
『それは自治体の対応に任せる』という回答で終わるだろう。

⑤労働者からの申告なら効果がある

(監督官)

厚労省にせよ監督署にせよ「労働者を護ること」がその役割である。

労働者が『こんな精神的負担の大きい業務が含まれているのに適用除外許可を与えたのは間違っている。適用除外許可を取り消せ』と申し入れるのなら別だが、
適用除外許可を求める雇用者が『こんな精神的負担の大きい業務が含まれているのだから適用除外許可が出るのはおかしい』と言われても監督署は対応できない。

裁判における「訴えの利益」と同じで許可申請をする雇用者に利益がないからである。

もちろん、その主張は広い意味では労働者を護ることになるが直接的なものではない。
それは政治の場で解決されるべきものであって行政手続きの現場で解決されるものではない。

『まあまあ尖らずに。何事もすぐには変えられません。南ぁ~無っ。』



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