変形労働時間制と断続的労働の適用除外許可

ボクも「こちら」をお勧め。



宿直業務と基準法の労働時間制限
「手続き不要,審査なし,賃金をどれだけでも安くできる」がリスクの高い方法
宿直業務には「ちょっとハテナ?」の変形労働時間制
●手続きがややこしいけど「真っ白」な方法

4.手続きがややこしいが「真っ白」な方法

カメレオン君が勧める「真っ白な方法」は、
・手続きがめんどう。
・労働内容に制約がある。
・徹底的な実地審査がある。
・事前に許可申請ができない。
・申請から許可までに1ヶ月近くかかり、その間は労働者を配置できない。

しかし、この方法では最低賃金が減額される。
あとで説明するが、「1名配置の変形労働時間制」より1ヶ月で20万円くらい安くなる。
もちろん合法賃金で。

逆に言えば、この賃金が合法的な最低ラインとなる。
無許可違法労働の場合はもちろん、変形労働時間制の場合も自分の賃金と比較してみよう。
これより安ければ使用者は最低賃金法違反をしている可能性大。
きっちりと「適正賃金との差額を5年分」を請求しよう。

「賃金が安い」のは仕方がない。
しかし「違法賃金」は許してはいけない。

a.断続的労働の適用除外許可

イ.基準法の労働時間制限が適用されない者

基準法の時間制限が適用されない労働者がいる。(基準法41条)

基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、
次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第1第6号(林業を除く)又は第7号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

次の労働者には労働時間の制限が適用されない。

①開拓・開墾,植物採集,農業,農園,畜産,漁業,養殖に従事する者(林業は含まず)

※別表第1第6号
「土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業」
※別表第1第7号
「動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業」

牧場や農園で働く者、漁師に雇われている者に8時間労働や休憩時間は関係ないことになる。

②経営者と一体になって労務管理をする者,経営者と一体になって活動する者
・工場長のように労働条件の決定,労務管理について経営者と一体的な立場にある者。
・秘書のように職務が経営者の活動と一体不可分である者

・経営者と一体になっている者であることが必要で、単なる管理職では足らない。
・きれいな秘書のお嬢さんに適用されるかどうか不明だか、秘書室長には適用されるだろう。
・もちろん、これらの者がその仕事をする場合に限られる。
警備本部長や支店長が警備員の代わりに宿直業務をする場合は基準法の時間制限が適用される。

③監視業務,断続的労働でその業務につき使用者が監督署の許可を受けた場合

これが警備員の行う宿直業務の場合。
ただし、監督官庁(基準監督署)から許可を得なければならない。
①と②は監督署の許可不要だが③については監督署の許可が必要になる。

ロ.監視業務

●監視業務とは

一定部署にあって監視する業務。
身体的負担,精神的負担の少ない業務であることが常態でなければならない。
(労働基準法解釈総覧改訂15版495頁)

例として挙げられているは「門番,踏切番,倉庫番など」(大昔の仕事)。

現代で言えば、

〇駐車場係
・駐車場を利用する客に「満車ですから第2駐車場を使ってください」とか「夜の8時までに出てください」と案内をする駐車場係。
・ただし、警備員の場合は車両誘導や料金徴収を行う場合は「身体的・精神的負担が大きい」として許可されない。

〇デパートの出入管理
・職員出入口に面した警備室に座って職員の出入りを監視をする業務。
・ただし警備員の場合は手荷物検査や立哨を伴う場合は「身体的・精神的負担が大きい」として許可されない。

〇計器盤監視員
・計器盤の前に座って異状発報があった場合には関係部署に連絡する業務。
・ただし、警備員の行う場合はプラント(石油精製,製鉄,原子力発電所など)で計器を監視する場合,「ずっとテレビモニターを見ていなければならない場合」は「身体的・精神的負担が大きい」として許可されない。

〇プール監視や万引抑止監視などは「精神的負担の大きい」ものとして許可されないのは当然だろう。
・ETCゲートでの監視業務も精神的負担の大きいものとして許可されないだろう。
・有料道路ゲートでの料金徴収業務は絶対に許可されない。

その業務が「基準法の時間制限を適用しない業務であるかとうか」は実際の許可審査で個別に判断される。

●警備員が行う監視業務の許可基準

警備員が行う監視業務についてははっきりとした基準がある。

警備業務が警備業法の規制のもとで行われ、賠償責任を負わされるので、
その業務を行う警備員には通常の労働者より大きい精神的負担がかかるからである。
そのため、厚生労働省は具体的な許可基準を定めている。
この許可基準は通常の労働者より厳しいものとなっているが、
通常の労働者の場合はこの基準に準じることだろう。

〇「身体的・精神的負担が大きいので許可しない場合
・立哨により行うもの。
・出入者の身体検査や所持品検査を伴うもの。
・料金徴収や車両誘導を伴うもの。
・常態としてテレビモニターを見ているもの。
・異状事態の場合の対応に高度な技術や判断が必要なもの。
・勤務場所が危険である場合。温度,湿度,騒音などの環境条件が有害である場合。

〇労働時間の制限が外される程度。
・1勤務の拘束時間は12時間以内。
・勤務と勤務の間に10時間以上の休息時間を取る。
※労働基準法解釈総覧改訂15判497頁

警備員の行う監視業務では次に述べる断続的労働のように16勤務や24勤務ができないことになる。

警備員と支所の職員さんは断続的労働のイロハから!

ハ.断続的労働

●断続的労働とは

実労働と手待ち時間(待機で何をしていてもよい)が交互に繰り返される業務で手待ち時間の方が長いもの。
監視業務が「通常の労働より労働強度が低い」のに対し
断続的労働は「平均すると通常の労働より労働強度か低くなる」もの。
その業務について監督署の許可を受けた場合に基準法の労働時間の制限が外されるのは同じ。

身体的・精神的負担の少ない業務に限る

基準法が監視業務と断続的労働を合わせて規定していることから、
断続的労働の場合も監視業務と同じく「その業務が身体的・精神的負担の大きい場合」や「業務を行う場所が危険な場合」は許可されないと考えられる。

この点については厚労省の解釈基準である解釈総覧に明記されていないが、
許可の具体例として次のものを上げている。
・寮母,施設に常駐する看護師については許可する。
・役員専属のお抱え運転手については許可する。
・タクシー運転手は精神的緊張が高いので許可しない。
・送電線の保守業務は精神的負担が大きいので許可しない。
・常駐消防職員については許可しない。

また、次に述べる「警備員の行う場合の許可基準」では
「業務が精神的緊張の少ないこと」,
「業務場所が危険でなく環境条件が有害ではないこと」を必要としている。

以上のことから
断続的労働においても「身体的・精神的負担の少ない業務であることが許可要件である」と考えなければならない。

●警備員の行う断続的労働の許可基準

断続的労働についても監視業務と同じく警備員が行う場合の許可基準が定められている。

〇いわゆる「宿日直業務の代行」として行われる業務であること。

・常態として殆ど労働する必要のない勤務で、
・定時的巡視,施錠及び開錠、緊急の文書または電話の収受、不意の来客への対応、非常事態発生の対応等を業務内容とすること。

〇巡視については次の要件を満たすこと。

①巡視のやり方が精神的緊張の少ないものであること。
・警備対象が広い場合(コンビナート,空港,遊園地など)については許可しない。
・構造上、外部からの侵入を防止できない施設については許可しない。
・高価な物品が陳列,展示,保管されている施設については許可しない。

②巡視する場所が危険ではなく、環境条件が有害でないこと。

③巡視回数は1勤務6回以下、1巡視1時間以内、合計4時間以内
・12勤務,16勤務の場合。
・24勤務の場合は1勤務10回以下、1巡視1時間以内、合計6時間以内。

④1勤務の拘束時間は12時間以内
・勤務中の夜間に継続して4時間以上の睡眠が与えられる場合は16時間以内。
・さらに隔日勤務で勤務と勤務の間に20時間の休息時間を取る場合は24時間以内。

⑤勤務と勤務の間に10時間以上の休息時間を取る
・勤務中の夜間に継続して4時間以上の睡眠が与えられる場合は8時間以上の休息時間。
・24勤務の場合は休息時間は20時間。

⑥1ヶ月に2日以上の休日を与えること
・休日は休息時間に続けて与える。

⑦常態として一つの警備場所で勤務すること
・二つの委託場所を掛け持ちする場合は許可しない。

⑧夜間に継続して4時間以上の睡眠を与える場合はその設備と寝具が必要

(労働基準法解釈総覧改訂15版498-499頁)

上では「巡視」を例にとって説明しているが、
宿日直業務で行われる業務は巡視だけではない。
巡視以外の業務についても同様の基準が当てはまる。
監視業務が含まれる場合は監視業務についての許可基準が適用される。

問題となるのは戸籍届受理業務と道路障害情報対応。
この二つは精神的負担の大きい業務である。
そのため、この業務を含む場合は適用除外許可を与えるべきではない。
→※断続的労働の適用除外許可の範囲を超えた違法労働業務・精神的負担の大きい業務

しかし、現場の監督官の判断は
「厚生労働省の解釈基準として具体的に例示されていないから許可を与える」とのこと。
この問題については「これから」だろう。
→※戸籍届受理,道路障害情報対応と適用除外許可の要件

以上詳しくは
間違いだらけの「警備員の宿直業務」
続「連続した4時間の睡眠を害する業務」
「間違ったまま」の警備員の宿直業務

●これらの制限は断続的労働の許可の場合だけ

以上の労働態様についての制限は断続的労働として許可を取る場合のことである。
無許可違法労働の場合はもちろんのこと、変形労働時間制の場合にも関係ない。

つまり、警備員のする宿直業務について変形労働時間制をとる場合は(それが合法なものかどうかは別にして)これらの制限は当てはまらない。
つまり、
・巡視や業務が身体的・精神的負担の大きいものでもOK。
・巡視や業務を行う場所が危険でも環境条件が悪くてもOK。
・24時間以上働かせてもOK。
・勤務と勤務の間の休息時間不要。連続勤務OK。
・仮眠させなくてもOK。仮眠場所や寝具も不要。

労働安全法や関係法令に反しない限り「何をさせても、どれだけ働かせても」OKとなる。

そのため、宿直業務に変形労働時間制の適用を認めると「監視・断続的労働の許可規制」の意味がなくなる。
早晩、監督署のメスが入ることだろう。

『ややこしい手続きだけど、ひとつずつ。』

ニ.ややこしい断続的労働の適用除外許可申請

上に述べたように断続的労働として許可されるにはいろいろの制限がある。
許可申請では「この制限をクリアーしている」ことを疎明する資料が必要になる。
その資料をもとに現場での実地調査,聴きとり調査がなされる。
そして、細かく審査されやっと許可が下りる。
許可が下りたときからその業務について「基準法の時間制限が外される」。

この手続きが「どれほどめんどうなのか」をもう少し説明しよう。

※断続的労働について基準法の時間制限の適用を除外する許可を
「断続的労働に従事する者に対する適用除外許可」という。
以下では「断続的労働の適用除外許可」or「適用除外許可」と記載する。

〇その業務を実際に行っていることが必要

許可は「その業務について、その事業者に与えられ」るので
まったく同じ業務を行う場合でも他の事業者が取得した許可は引き継げない。

予めその業務について適用除外許可を申請することもできない。
実際に業務が行われていなければ「許可基準を満たすかどうか」チェックできないからである。

発注者が仕様書で業務内容を事細かに指定していても同じ。
「実際に許可基準に適合した業務が行われているかどうか」チェックできないからである。

そのため、許可申請はどれだけ早くても契約後。
実地審査はどれだけ早くても業務開始後となる。

津市の宿直業務について言えば
8カ所で1年契約。
4月中旬に入札、4月末に契約、5月1日から業務開始。
申請はどれだけ早くても4月末の契約後。
実地審査はどれだけ早くても5月1日の業務開始後。
許可申請から許可まで1ヶ月かかるから、5月一杯は適用除外許可なしとなる。
その間、警備員を配置すれば基準法違反となるので経営者が業務を行わなければならない。
他の警備業者はこれを笑い「一ヶ月も一人で勤務できるわけがない。勤務中に抜け出しているようだ。」と根も葉もない噂を流す。
彼らは「断続的労働の適用除外許可申請をしたことがない」から「そうしなければならない」ことが分からないのだ。
(それとも、ケンカを売られているのかな?それなら「お買い上げします」が…。)

また、契約期間中しか許可申請できない。
「現在は受注していないが以前に受注していたから」と許可申請することはできない。
(この場合は以前の受注時に適用除外許可を取っていなかったことがバレてしまう。)

つまり、津市発注の宿直業務8カ所について適用除外許可を得るためには実際に8カ所を受注して、その契約期間中に申請しなければならない。
もちろん、その8カ所での最初の一ヶ月は経営者が勤務しなければならない。
(8カ所全部について許可取得しておけばどこを受注しても楽だが、当方の許可はまだ3カ所)

なお、適用除外許可は「その業務について」与えられるので、
業務内容が変わらない限り無期限となる。

〇許可条件を満たしていることを疎明する資料が必要

・分刻みの詳細な業務手順マニュアル。
・タイムスケジュールチャート
・巡回経路図
・電話対応,戸籍届受理,来訪者対応,などの「定まっていない業務」については
 前年実績からの推測回数と所要時間から1日の平均時間を出す。
・仕様書
・契約書
・労働条件通知書
・出勤簿、出勤予定票

これら資料はA4で30枚程度になる。
それを二部作成。

やっかいなのは、前の受注者が適用除外許可を取っていなかった場合。
(無許可違法労働の場合だけでなく適用除外許可不要の変形労働時間制や「6時間でつなぐ方法」の場合。津市の場合は何十年もこの状態だったようだ。)

この場合は業務が適用除外許可の要件に適合するものになっていない。
「あれもこれも警備員にやらせろ」・「おっしゃるとおり、なんでもやらせましょう」。
精神的負担の大きい業務,夜間に連続した4時間睡眠を害する業務,
仕様書に書かれていない業務までやらされている。
まさしく、「警備員は職員様の小間使い」状態。

津市の仕様書には「この宿直業務は断続的労働(適用除外許可の得られる業務)である」とされているので、受注者は断続的労働の許可要件に合うように業務を縮小・変更できる。

しかし、担当職員は「断続的労働の適用除外許可」という言葉も知らない。
『そんな許可が必要なンですか?』
『えっ?監督署の実地調査?そんなの今まで一度もありませんでしたよ!』

担当職員に基準法の時間制限から説明し、適用除外許可の要件を理解させ、
「今まで行われていたこの業務は許可されない、こう変えれば許可される」と業務内容を検討相談。
やっと、許可要件に合うような業務にして許可申請。
前年度は申請までに2週間かかった。 →  こちら

職員たちは「なぜこれほどまでに仕事にゴチャゴチャ文句を言うのだろう。この警備業者はやる気があるのかなぁ。」
これが普通なの!アンタたちが警備員に違法労働をさせてきたの!

〇実地調査と聴きとり調査

提出した資料について現場で実地調査が行われる。

さすがは若い国家公務員。
監督官は提出した分刻みの業務マニュアルを完全に理解してきている。
一番時間のかかる細密巡回についてそれを再現させられる。
使用時間はストップウォッチで測られる。

そのあと一つ一つの業務内容について細かく聴きとり調査が行われる。
計器盤があれば「どういうときにどれを操作するのか、どこに連絡するのか」。
チックポイントは「精神的負担の大きさ」と「所要時間」。
「夜間に連続した4時間の睡眠が確保できるかどうか」にも厳しい。

参考のためにと「以前の警備業者の1年分の日報」をチェックする。
(その日報は適用除外許可を得ていない警備業者のものですけど…。)

事前に提出した業務マニュアルの不備な点は訂正させられる。

実地調査は軽く3~4時間。
監督官にもよるだろうが「根掘り葉掘り」チェックされる。

〇許可

実地審査で問題がなければ「許可は下りる」。
すんなりいって2週間。
初めての許可申請や監督官の心証が悪いともっと時間がかかる。

許可申請から許可までは1ヶ月くらいかかると考えたほうがよい。

〇許可の効果

許可が下りるとそのときから「申請した業務内容について」基準法の労働時間の制限が外される。

ただし、変形労働時間制のように「一切の制限がはずされる」わけではない。
断続的労働の要件はもちろん申請した業務を超えることはできない。

申請時から業務内容が変わったり,追加されれば「その部分に関しては許可無効となる」。
(業務内容が減ったり軽くなったりした場合は労働者が不利にならないのでOK)
当然、基準法違反となる。許可の取消もありうる。
そのため、許可を取った後に業務を追加することはできない。

当方は本年4月にある支所の宿直業務を2年ぶりに受注した。
以前受注したときから別の警備業者が2社入っている。

当方はこの宿直業務につき2年前に断続的労働の適用除外許可を取っている。
業務は2年前に当方のやっていたもの(当方のマニュアル)がベースになっているが、
「この2社・2年」で業務内容が少し変えられている。

「セキュリティカードを持っていない者が朝早くから自由に出入りできるように」時間外に出入口の一部を開放したり、定時に居残っている職員の名前をリストアップして報告書に書いたり。
これらは、当方の取得した許可の範囲外のものであるため、これらを業務に含めれば許可の範囲外の業務をさせたとして基準法違反となる。
もちろん、初日からこれらの業務を外してもらった。

もっとも、これらの業務はセキュリティを害するものであり、または警備業務と関係のないものなので「外すのは当然」のことでもある。

しかし、どれだけ警備上必要な業務であっても、業務が追加されれば許可を取り直さなければならない。
許可を取り直さないと無許可違法労働になってしまう。

当方が前警備会社の警備員の行う業務に同行したのは業務引継日の6時間だけ。
前警備会社の責任者は驚いていた。
『当社では引継を3~4日間徹底的にやって、前警備会社のやり方を覚えました。』

施設警備のイロハを知らない「守衛のオッチャン」が作り上げたやり方を覚えても意味がないだろう。
そもそも、断続的労働の適用除外許可で申請した業務以外のことはできないのだから。
この責任者も断続的労働の適用除外許可というものを知らないらしい。

b.最低賃金の減額特例許可

なぜ、こんなめんどうで時間のかかる適用除外許可を取ろうとするのか?

それは適用除外許可を得れば最低賃金を減額できるからである。
正確に言えば「最低賃金を減額する許可」を申請できるから。

この許可を「最低賃金の減額の特例許可」という。
(※以下では減額許可と記載する。)

断続的労働の適用除外許可はその業務について与えられ、効力は無期限。
最低賃金の減額許可はその労働者について個別に与えられ、その効力は1年~3年。

断続的労働の適用除外許可は「その業務に従事する労働者には基準法の時間制限を適用しない」という許可。
最低賃金の減額許可は「その業務に従事する〇〇という労働者の最低賃金を〇〇%減額してもよい」という個別的な許可。
減額許可の期限を短くしているのは「業務変更をチェックするため」。

断続的労働の適用除外許可と最低賃金の減額許可はセットで申請する

通常、断続的労働の適用除外許可と最低賃金の減額許可はセットで申請する。
適用除外許可の審査は監督署が行い、最低賃金の減額許可の審査は労働局が行う。
しかし、両方とも窓口は監督署。

まず、監督署が「その業務について断続的労働の適用除外許可を与え」、
そのあと労働局が「その業務を行う〇〇という労働者の最低賃金の減額許可を与える」。
その労働者への聴き取りは監督署が行い、労働局が書類審査をして許可する。

もちろん、別々に許可申請することもできる。 →  こちら
※別々申請では適用除外許可審査のときに実地審査がされているので減額許可のときは省略される。
そのため、減額許可は申請から許可までが早い。
また、減額許可のときに労働者に実地勤務をさせるが、
適用除外許可が下りているのでこの実地勤務は基準法違反とならない。

最低賃金の減額許可の申請

〇追加資料
添付書類は断続的労働の適用除外許可申請のときの資料に次のものを追加する。
・その労働者についての雇用契約書(雇用条件通知書)
・出勤簿,1年分の出勤予定表
(平日の16勤務のみ、土日・祝日の24勤務のみなら出勤予定表は2ヶ月程度でよい。
16勤務と24勤務が混ざるときは拘束時間,実労働時間,手待ち時間の平均を計算するため1年分必要)

〇その労働者が実際の勤務をしたことが必要
許可申請には「その労働者が実際に勤務をしたこと」が必要になる。
「実際の業務が申請通りのものであるかどうか」を聴き取るためである。

最低賃金の減額許可は許可が下りた時点から効果を生じる。
減額許可申請の段階ではまだ減額の許可が下りていない。
そのためこの労働者には「最低賃金減額前の通常の賃金」を支払わなければならない。
この賃金が高くなるので「1日だけ勤務させればよい」。
(16勤務と24勤務の両方をさせる場合は両方の業務を1日ずつ行わせる。)

なお、断続的労働の適用除外許可と最低賃金の減額許可をセットで申請する場合は、
「実際に勤務をさせるとき」にその業務についての適用除外許可が出ていない。
そのため、この勤務は基準法の時間制限に違反し基準法違反となる。

「最低賃金の減額許可を得るためには基準法違反をしなければならない」。
労働局や監督署が使用者に基準法違反をさせていることになる。

これを回避するのは簡単。
断続的労働の適用除外許可の効力を申請時に遡らせばよい。
厚生労働省は石頭解釈でこの回避措置をとらない。
頭のよい国家公務員は「あんがいオバカさん」
→  断続的労働の適用除外許可の効力発生時期

〇最低賃金の減額率

・1名配置で休憩なし。
・拘束時間すべてが労働時間(所定労働時間)となる。
・所定労働時間=実労働時間+手待ち時間

・実労働時間は100%評価、手待ち時間は60%評価

・減額率=(手待ち時間 × 0.4)÷所定労働時間 × 100
・%の小数点第2位以下切り捨て。

〇許可が下りるまでの期間

本年受注した支所の業務については3年前に適用除外許可を得ている。
ただ、この支所の仕事が初めての警備員については減額許可が必要。

「契約が2年途切れているから業務内容が変わっているかもしれない」と再度の実地調査と聴き取り調査。
しかし、減額許可は申請から1週間で下りた。
ただし、減額許可の効力は現在の契約期間の1年であった。
来年度も受注すればこの警備員についての減額許可を再度申請しなければならない。

「許可を取られたら出番がないな…。」

c.賃金計算

●最低賃金の減額率

現在行っている支所の平日の宿直業務では
・所定労働時間(拘束時間)=15時間15分=915分
・実労働時間=3時間5分=185分
・手待ち時間=15時間15分-3時間5分=12時間10分=730分
・減額率=(730 分× 0.4)÷915分 × 100=31.92…%≒31.9%。

つまり、最低賃金を31.9%減額できることになる。

●賃金計算

〇平日16勤務の日当

1名配置で15.5時間の宿直業務の賃金はどうなるか? 
・減額率は31.9%を使う。
・1名配置のため休憩は存在しないので拘束時間の15時間30分が全て労働時間となる。
・基準法の時間制限が適用されないから8時間を超えた分に25%増しの残業代は発生しない。
・22時~翌5時の7時間については25%の深夜割増。

ここまでは変形労働時間制と同じ。

しかし、最低賃金が安くなる。
適用される最低賃金=最低賃金 ×(1- 減額率)=1050円 × (1-0.319)=715.05円≒716円

16勤務の日当=減額された最低賃金 × (15.5時間+7時間 × 0.25)=716円 × 17.25時間=12351円

変形労働時間制の場合の平日日当は18113円 →  こちら

〇土日・祝日の24勤務の日当

・土日・祭日は平日よりも実労働時間が少なくなるが平日と同じ185分とする。

・所定労働時間=24時間=1440分
・実労働時間=185分
・手待ち時間=1440分-185分=1255分

・減額率=(1255 × 0.4)÷1440 × 100=34.8611…≒34.8%

・1名配置のため休憩は存在しないので拘束時間の24時間すべてが労働時間となる。
・基準法の時間制限が適用されないから8時間を超えた分に25%増しの残業代は発生しない。
・22時~翌5時の7時間については25%の深夜割増。
・減額された最低賃金=最低賃金 ×(1- 減額率)=1050円 × (1-0.348)=684.6円≒685円

・24勤務の日当=減額された最低賃金 × (24時間+7時間 × 0.25)
=685円 × 25.75時間=17638.75円≒17639円

変形労働時間制の場合の平日日当は27038円 →  こちら

変形労働時間制の日当との差:16勤務で5782円、24勤務で9399円
4週間では:5782 円× 20日+9399円 × 8日=190832円。
1ヶ月の賃金が20万円も安くなる。

手続きが面倒で業務に制約の多い断続的労働の適用除外許可と最低賃金の減額許可を取るのはこのためである。

●減額許可の日当が最低日当

最低賃金の減額許可での日当は合法的日当の最低額となる。
この日当以下なら「違法賃金の可能性が高い」。

業務内容にもよるが通常の宿直業務での減額率は30%程度。
最低賃金1050円なら16勤務で12000円くらい、24勤務で19000円くらい。

これより安ければ監督署に相談に行こう。
監督署は使用者に「適正な賃金を支払いなさい」と勧告するが
「労働者にいくら支払いなさい」とは言わない。
「いくらで解決するかはお互いに話し合って決めなさい。監督署は関知しません。」

この場合に会社の提示する10万円や20万円の解決金で「解決しましたの署名」をしてはいけない。
これで「円満解決」となってしまう。

円満解決でも「そのあと干されて辞めなければならない」のは同じ、
「使用者の違法労働や違法賃金を問題にした警備員として他の警備会社が雇わない」のも同じ。
それなら、裁判を起こしてきっちりと何百万円の差額を手に入れよう。

素人では民事裁判は無理なので法律事務所に入ってもらおう。
費用など1割程度、安いものである。

変形労働時間制については「まずはこのくらい」で。

2年ぶりの支所の仕事が流れ出したから、そろそろ「次」に取りかかろう。

それは「傲慢大江戸職員を強制排除する」こと。
仕様書の内容をねじ曲げて契約外の業務をさせた契約担当者を公務員職権乱用罪で刑事告訴。
徴収し過ぎた保険料を「署名ではだめ認印が必要」として返還しない保険課の収支責任者を過誤納保険料の業務上横領罪で刑事告訴。
パワハラなんか生ぬるい。刑事告訴で警察の捜査を開始させ世間の注目を引く。
今年は「これ」で楽しめる。

彼らは「自分たちが市民を従わせている」と思い上がっている。
「市民が自分たちの雇い主である」ことを忘れている。
そんな傲慢な大江戸小役人を刑事告訴や刑事告発と世間の批判で一人一人排除していく。
それが「津市の利益」になる。

津市の行政をただそう会(仮名)」を立ち上げよう。
憤りを持つ津市民の声を!

つづく。

怒れ、津市民!







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