「犯罪であること、証拠が集められること」を検察官に納得させればよい。
●刑事告訴をするまでの経緯
●告訴状に書かなければならないこと
●告訴状提出後のできごと
2.告訴状に書かなければならないこと
告訴状に定められた様式はない。
検察官に「犯罪が成立すること」,「起訴して有罪にもっていけること」を確信させるものであればよい。
「犯罪が成立しないもの(犯罪でない,時効完成)」や「証拠が散逸して集められないもの」は受理されない。
ただし、「刑事告訴があった場合は検察官はそれを受理しなければならない」という裁判例もあるが、
告訴状が受理されるかどうかは検察官の「都合次第・気分次第」。
彼らも「起訴しなければならない事件や公判中の事件」を抱えている。
素人判断の刑事告訴を相手にしているヒマはない。
「ちいさな犯罪」に関わっている余裕もない。
どこかの市長の経歴詐称事件のように「世間を騒がせている事件」でない限り取り上げない。
時間をおいて「検討した結果不受理になりました」と告訴状が返送されてくる。
これが法律実務の一般常識。
しかし、やってみなければ判らない。
公務員の職権濫用や業者いじめに目くじらを立てる検察官がいるかもしれない。
別の事件を捜査するきっかけを待っているかもしれない。
「瓢箪から駒」ということもある。
与えられた権利だからやってみる価値はある。
当方の提出した告訴状の内容について説明していこう。 → 告訴状
a.構成要件該当性
●構成要件を満たすこと
刑法には「こういうことをしたら犯罪になり、こんな刑罰を与えますよ」ということが書いてある。
「どんなことが犯罪になるのか,何をどこまでやってもよいのか」が予めはっきりと定められていなければ、
国民は自由活発な経済活動や社会活動ができないからである。。
「犯罪になる行為と刑罰」を構成要件という。
犯罪を構成する要素(要件)である。
簡単に言えば「犯罪メニュー」。
「こんなカツ丼が1000円」、食堂入口にある料理サンプルのようなものだ。
行為がこの構成要件に該らなければ「その犯罪性を検討する余地はない」。
構成要件とはその行為の犯罪性を検討する「最初のふるい」になる。
その行為が構成要件に該れば、
行為の違法性の検討(正当防衛や正当業務行為などで行為の違法性がない場合はここで終わり)。
行為者の責任の検討(責任無能力や期待可能性がなく行為者に責任性がない場合はここで終わり)。
最後に、裁判官が法定刑の範囲で刑罰を決める。
行為の違法性や行為者の責任性は捜査段階で検察官が判断し、公判で検察官が主張して裁判官が決める。
告訴状には「そこまで書く必要はない」
しかし、最初のふるいである「その者の行為が構成要件に該ること」は絶対に書かなければならない。
しかも、それが検察官を納得させるものでなければならない。
●公務員職権濫用罪の構成要件
刑法193条(公務員職権濫用)
「公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、
又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の拘禁刑に処する。」
犯罪の構成要件は
①公務員が
②権限をもっていること
③その権限を濫用し
④相手に義務のないことを行わせたり、相手の権利の行使を妨害したりすること。(結果の発生)
⑤以上のことについての認識があること。(構成要件的故意の存在)
これを被告訴人である支所の契約担当責任者について検討すると、
①公務員が
・津市職員
②権限
・その年度の業務内容についての仕様書を決める権限がある。
・その仕様書に基づいて業務受託警備業者に業務指示命令をする権限がある。
③濫用し
・仕様書に定められていない業務(水道事業所の深夜工事担当職員の深夜出入り対応)を、
「予定できない突発的業務」だとして業務受託警備業者にその業務をさせる。
※詳しくは権限濫用行為は次の3種類となる。
a.仕様書の記載内容から導き出せない「予定できない突発的業務」という業務を持ち出す。
b.その業務が仕様書から導き出せるとしても
「適用除外許可の要件を害し契約内容として無効になる」のにそれを考慮しなかった。
c.水道事業所の深夜工事は「臨時的・緊急的なものではなく定期的なもの」なのに
「臨時的・緊急的なもの」とした。
④結果の発生
・業務受託者である当方にその業務をさせた。
⑤事実の認識
・①~④について認識している。
※認識の程度は「意欲」までは必要ない。
「そうかもしれないがそれでも構わない」という「認容」でよい。)
〇契約担当責任者以外の支所職員について
仕様書の内容を決めることに対し「どの程度の権限があるか」、
今回の業務指示に対して「どの程度の影響力があるか」不明なので、
契約担当責任者との共謀共同正犯,教唆版,幇助犯とした。
〇水道事業所責任者について
「水道事業所の深夜工事担当職員の深夜出入りについて警備員に対応させること」について
どれだけの発言力や影響力があるか不明なので、
契約担当責任者との共謀共同正犯,教唆犯,幇助犯とした。
〇調達契約課について
上述したように
「不作為による公務員職権濫用罪」の成立する余地はあるが、
職務管掌や職務権限が不明なので今回の刑事告訴の対象から外した。
b.行為を証明or疎明する資料の添付
その行為が犯罪構成要件に該っても、「それを証明することができない」のなら意味がない。
今回の事案なら
〇権限の濫用について
a.「水道事業所の深夜工事担当職員の深夜出入りに警備員が対応する業務」が仕様書に記載されていないこと。
b.支所が「予定できない突発的業務」だと回答したこと。
c.「予定できない突発的業務というものが仕様書の内容になっているとしても、それが違法or公序良俗に反するものであれば契約内容として無効となること」を支所が知っていること。
d.そもそも「水道事業所の深夜工事」は臨時的・緊急的なものではなく定期的なものであること。
〇結果の発生
e.当方が対応した記録。
当方の添付した資料は
aについて:2024年度仕様書
bについて:当方の要望と支所回答
cについて:当方の主張
dについて:出入り管理簿
eについて:出入り管理簿と警備員記載の記録
これらは、検察官に「有罪となる証拠が集められる」と確信させるものであればよい。
「完全に有罪とできる証拠」でなくてもよい。
検察官には捜査権限があるので「必要な証拠」を集めることができる。
c.処罰意思
告訴をする者が「処罰をして欲しい」と思っていなければ告訴状は取り上げられない。
処罰意思がない告訴状はたんなる情報提供に過ぎない。
「なぜ処罰して欲しいのか,どのように処罰して欲しいのか」をしっかり書かなければならない。
今回の告訴状では次のようなことを書いた。
支所契約責任者が津市公契約条例における津市と津市職員の「委託業務の適性な履行を確保する責務」に反していること。
2024年度に問題となった「水道事業所の深夜工事担当職員の深夜出入りに警備員が対応する業務」について2025年度の仕様書に何の言及もなく、このままうやむやにし問題を解決するつもりがないこと。
この業務を受注した以前の警備業者は「水道事業所の深夜工事担当職員の深夜出入りに警備員が対応する業務」をやらされていたこと、これから受注する警備業者もやらされること。
津市業務委託での違法労働と劣悪な労働環境をなくするためにも、時代錯誤の津市職員の横暴を処罰しなければならないこと。

コケないように気をつけよう!
d.告訴状の提出
●告訴状の提出先
告訴状の提出先は事件を所轄する警察署か地方検察庁。
刑訴法241条
「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。」
刑訴法242条
「司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、
速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。」
告訴状を警察署に提出しても「速やかに検察庁に送付」することになっている。
このように、告訴状は地方検察庁と警察署のどちらに提出しても地方検察庁の方に届くようになっている。
しかし、告訴状を受け取った警察署の「速やかに」の解釈によって検察庁への送付は遅れるだろう。
悪くすれば「握りつぶし」ということもあるかもしれない。
警察が最初に扱った事件は「その事件を検察庁に送るかどうか」は警察の判断に任される。
その縄張り意識から「受け取った告訴状や証拠物を速やかに検察庁に送付するかどうか」判らない。
警察署は検察庁以上にいろいろな事案や事件を抱えている。
検察庁よりも親身になって話を聞いてくれるが「まあこの程度では…。」と門前払いになる。
検察庁に提出するのが確実だろう。
ただし、検察庁は「警察のように俗っぽくない」ので「話を聞いてくれたり相談に乗ってくれたり」はしない。
サバサバと法律的なチェックを行う。
「門前払い」はないが「告訴状受理→捜査開始」のハードルは高くなる。
今回は「サバサバ処理」の津地方検察庁に提出した。
●提出手続き
告訴状と疎明資料を持って地方検察庁の受付に行き、
受付の警備員さんに『告訴状を提出したいので取り次いでください』と言えばよい。
しばらくすると検察事務官らしき職員か受付に来て告訴状と疎明資料を受け取る。
受取証などはくれない。
告訴状を2部作っていって、一部に「〇〇年〇〇月〇〇日受領」というスタンプも押してくれない。
ただし、告訴人欄に押印を要求される。
署名ではダメらしい。
ここでも「昭和チック」。
告訴状を受け取った検察事務官らしき人は『不受理になった場合は連絡します。』とだけ言って去って行く。
不受理通知が来なければ受理された可能性が高くなる。
もっとも、受理されればマスコミが騒ぐので判るだろう。
e.最高裁で違憲判決を勝ち取った警備員
●成年後見人・保佐人制度
精神上の障害により判断能力の低い者を保護するために成年後見人,保佐人の制度がある。
成年後見人は被後見人のした法律行為を取り消すことができる。
一定の法律行為を保佐人の同意なしに被保佐人が行った場合は無効となる。
成年後見人や保佐人を付けることは、
本人、配偶者、四親等内の親族などが家庭裁判所へ申し立て家庭裁判所が審判で決定する。
民法7条(後見開始の審判)
「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、
家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。」
民法8条(成年被後見人及び成年後見人)
「後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。」
民法9条(成年被後見人の法律行為)
「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」
民法11条(保佐開始の審判)
「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、
家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、
保佐開始の審判をすることができる。
ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。」
民法12条(被保佐人及び保佐人)
「保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。」
民法13条(保佐人の同意を要する行為等)
「被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。
ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
2 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
●警備員の欠格事由
以前の警備業法ではこの被後見人,被保佐人が警備員欠格事由となっていた。
警備員欠格事由があれば警備員になれない。
警備員になる者は法務局で「登記されていない証明書」をもらって警備業者に提出したことがあるだろう。
成年被後見人や被保佐人になれば「その旨の登記」がされるので「その登記がされていないこと」を証明するためである。
2019年の警備業法改正で
警備員の欠格事由から「成年被後見人・被保佐人」が削除された。
成年被後見人と被保佐人は通常人と同じく警備業法3条7項の「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの」の適用を受けることになった。
警備業法14条,警備業法3条1号~7号,
●退職させられた警備員
軽度の知的障害のある30歳の交通警備員が2017年3月に「被保佐人」となった。
そのため、当時(改正前)の警備業法の警備員の欠格事由に該ることになり、今まで勤めていた警備会社を退職させられた。
この警備員が「警備業法が成年被後見人と被保佐人を一律に警備員の欠格事由としている」のは
職業選択の自由を保障する憲法に違反すると訴訟を起こした。
そして、10年かけて2026年2月18日最高裁の違憲判決を得た。
このエネルギーには感服させられる。
今回の刑事告訴について「そこまでする必要はないのでは?」と迷ったことが恥ずかしい。
自分の権利を守るために与えられた法律上の権利は「堂々と」使えばよい。
次は「津市介護保険課の収支責任者」の刑事告訴を検討している。
徴収し過ぎた保険料の返還請求で「署名ではダメ押印が必要」としてかたくなに返還しない。
津市会計規則では収支責任者の判断で「署名でもOK」とできるのにそれをしない。
「紙と印鑑行政」の昭和の遺物職員がここにもいる。
あんたの手元にある「徴収し過ぎた保険料」は誰のお金かな?
※呆れる「津市の印鑑行政」
この昭和遺物職員に対する刑事告訴は「公務員職権濫用罪」ではない。
「業務上横領罪」である。
業務上横領罪の法定刑はなんと10年以下の拘禁刑。
公務員職権濫用罪の法定刑の5倍。
刑法253条(業務上横領)
「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。」
さらに、「介護保険課の収支責任者が徴収し過ぎた保険料を業務上横領して刑事告訴された」ことがインパクト。
「クローズアップ現代」級かも。
『自分の権利を守るために何を躊躇する必要があるのか!』
最高裁の違憲判決を勝ち取った警備員さんに勇気をもらった。